2019 Fiscal Year Annual Research Report
ゼニゴケの精子変態過程におけるオートファジーを介したオルガネラリモデリングの解析
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19J13751
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
法月 拓也 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 精子変態 / ミトコンドリア / ゼニゴケ / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
コケ植物であるゼニゴケの精子変態過程では大規模かつ厳密な細胞構造の変化が起こることが知られている。これまでの結果からこの過程にオートファジーの関与が示唆されたため、オートファジーの機能欠損変異体を用いて、オートファジーの役割の解明を目指した。2019年度の解析から小胞体、プラスチド、ミトコンドリア及びペルオキシソームといった様々なオルガネラの再編成にオートファジーが必要であることが初めて明らかになった。 またミトコンドリアに関しては詳細な観察を進め、精子変態過程ではまずオートファジー分解によってミトコンドリアの数が1個となり、その後分裂によってミトコンドリアの数が2個になることが初めて明らかになった。この分裂を阻害することで、ミトコンドリアの数が1個になる精子を作出することが初めて可能となり、この精子を用いて解析することで、ミトコンドリアの数と精子機能の関連が初めて明らかになることが期待される。 ミトコンドリアは最終的に必ず2個残ることからオートファジーによって選択的に分解される可能性が考えられる。そのため選択的分解がどのように起こっているのかを明らかにするために、基質の認識に関わるATG8の相互作用因子の同定を酵母ツーハイブリッド法によって試み、複数の相互作用因子を同定したが、その中にミトコンドリアの分解に関わる因子はなかった。現在別のアプローチでATG8の相互作用因子の同定を試みており、今後精子変態過程でどのようにミトコンドリアの分解が起こるのか明らかになることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度「精子変態過程におけるオートファジーを介したミトコンドリアの数の制御」を明らかにしようと解析を行なってきた。分解されるミトコンドリアの認識に関わる因子は植物ではほとんど保存されていないため、新規因子の同定を試みたが、現在までにミトコンドリアの認識に関与する因子の同定はできず、2019年度までに分子機構の解明に至らなかった。 しかしながら、ミトコンドリア動態の観察を進めていく上で、ミトコンドリアが1個になる過程を見出し、分裂を阻害することで、ミトコンドリアの数を1個に改変した精子を世界で初めて作出できるようになった。古くからゼニゴケを含むコケ植物の精子ではミトコンドリアの数が2個であることが知られていたが、その生物学的意義は現在なお全く不明である。ミトコンドリアの数を1個にすることができたことは、ミトコンドリアの数の生物学的意義を解き明かす上で非常に大きな手掛かりになると期待される。 また2019年度の解析の結果、ミトコンドリア動態の制御に、多層構造体が重要なはたらきをすることが示唆されたため、2020年度に多層構造体に着目して解析することによって制御機構の解明につながることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に作出した1個のミトコンドリアを持つ精子の運動能や受精能を解析することで、ミトコンドリアの数と精子機能の関連を明らかにする。 2019年度の解析から、精子変態過程におけるミトコンドリアの分解には多層構造体が重要なはたらきをすることが示唆されたため、多層構造体の構成成分と考えられているcentrinの変異体を作出し、ミトコンドリア動態の観察を行なう。また選択的分解がどのように制御されているのかを明らかにするために、質量分析を用いたATG8の相互作用因子の同定及びその機能解析を行なう。さらにどのようなミトコンドリアが分解されるのかを詳細に明らかにするために、精子変態過程におけるミトコンドリアのカルシウムイオン濃度や活性酸素種の蓄積状態などの観察も行なう。
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