2019 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ構造を保持した組成変換による単結晶性ポーラスチタン酸バリウムの作製
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19J13784
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松野 敬成 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ナノ多孔体 / 鋳型合成法 / コロイド結晶 / 金属酸化物 / 融剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、単一の結晶子中に複数のナノ細孔を有するような単結晶性BaTiO3ナノ多孔体の合成手法を確立し、特性評価を行うことである。このような圧電物質を合成できれば起電力の向上が期待できるだけではなく、近年注目されている圧電触媒の分野においても貢献が期待できる。しかし単結晶性酸化物ナノ多孔体の合成は、これまで限られた組成でのみ報告されており、BaTiO3での合成は従来の手法では困難である。そのため、本年度は単結晶性酸化物ナノ多孔体を合成する手法について検討した。 単結晶性TiO2ナノ多孔体を合成し、Ba化合物と共に炭素中に閉じ込め、不活性雰囲気下で加熱することで単結晶性BaTiO3ナノ多孔体が合成できるのではないかと考え、検討を行った。しかし、想定していたBaTiO3の生成は確認されなかった。これはi) Ba化合物がTiO2よりも炭素と優先的に反応したため、ii) Ba化合物とTiO2の接触が少なかったため、という可能性が考えられる。そこで合成手法に関して更なる検討を行った。これまでは炭素鋳型中でナノ多孔体と反応する金属化合物はLi化合物に限られていたが、これはLi化合物以外の金属塩では炭素源への溶解度が小さく、炭素鋳型中でナノ多孔体と均一な反応が進行しないためだと考えられる。本検討では水溶性の炭素源と共に金属塩を溶解させた水溶液を用いることで、炭素鋳型中でナノ多孔体との反応が可能になることを見出した。本手法を用いればBa化合物とTiO2を反応させることができる可能性があり、単結晶性のナノ多孔体を合成する汎用的な手法への発展が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
炭素鋳型中でナノ多孔体と金属化合物を反応させ、ナノ構造を保持した状態で組成を変換する、という合成手法について検討を行った。ナノ多孔体にはシリカコロイド結晶を用いた。その結果、水溶性の炭素源とNa化合物を溶解させた水溶液を炭素前駆体とすることで、炭素に包埋した状態で酸化物とNa酸化物を反応させることが可能であることを見出した。Na化合物と反応して得られたシリカナノ多孔体はcristobaliteからなり、元々のシリカコロイド結晶のナノ構造を保持していた。これにより、ナノ構造が制御されたcristobaliteナノ多孔体の合成に初めて成功した。 本手法はNa化合物のみならず、水溶性の金属化合物全般に対して適用できる手法であると考えられ、結晶性をコントロールして酸化物ナノ多孔体を合成する上で重要な技術になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
水溶性の炭素源を用いてBaTiO3ナノ多孔体の合成を試みる。また、反応温度が高温であったために炭素とBa化合物の反応が進行した可能性があるため、水熱合成法による比較的低温での反応も試みる。また、BaTiO3に限らず単結晶性の圧電物質ナノ多孔体を合成することができれば、本質的な課題である圧電変換特性の向上や圧電触媒への応用が期待できるため、合成を検討する。本年度は炭素鋳型中でナノ多孔体と金属化合物を反応させる合成手法を検討し、適用可能な組成を拡大することに成功している。本手法を応用することで圧電物質ナノ多孔体の合成が期待できる。
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