2019 Fiscal Year Annual Research Report
Predicting soil microbial community dynamics after environmental perturbation
Project/Area Number |
19J14142
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
美世 一守 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 細菌群集構造 / 微生物生態学 / 形質ベースアプローチ / データベース / メタゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が対象とする土壌生態系は、土壌1gあたり数千から数万種もの微生物を含む極めて複雑な系である。こうした極めて複雑な系の、外的撹乱に対する挙動を明らかにするには、系自体を解釈可能な形に要約することが重要である。本年度は、土壌微生物を含む環境微生物全般を新たな指標「生息環境」によって分類し、土壌微生物群集構造を「生息環境の組成」を用いることで、直観的に・解釈しやすく表現する上で、大きな研究の進展が得られた。 具体的には、まず、環境微生物の生息環境を評価する方法を確立するため、様々な環境サンプルに由来するメタゲノムデータを網羅的に解析し、微生物ゲノムの塩基配列と、その微生物の生息環境を対応づけた。その成果を微生物生息環境データベース「ProkAtlas」にまとめ、解析パイプラインとともに公開した(https://msk33.github.io/prokatlas.html)。さらに、ProkAtlasを用いて様々な土壌微生物群集データの生息環境解析を進め、高塩分環境に適応した微生物群集の形成過程、初期土壌生成過程、土壌中の動物遺体の分解過程などを、生息環境解析によって直観的に記述できることを示した。他方で、ヒト腸内細菌叢や河川生態系に対しても生息環境解析を適用したところ、ヒト腸内細菌叢の形成過程や、河川における病原菌の移動を追跡できることも判明した。微生物生態学で広く用いられている系統分類群による要約は、個々の微生物の生態的性質を必ずしも反映しておらず、解釈が難しい場合が少なくないが、本研究成果はそうした問題点を解決する可能性を持つものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では当初、土壌生態系への特定の撹乱(森林火災、施肥、重金属汚染など)のみに注目してメタアナリシスを実施する計画であった。しかし、申請後の世界的な研究動向を踏まえ、より網羅的なメタアナリシスが有効だと判断された。上記のような撹乱を受けている系に限らず、さまざまな系における微生物群集構造データを網羅的に解析することで、微生物の生息環境データベース「ProkAtlas」を構築し、環境微生物の生息環境を評価する方法を確立した。さらに、ProkAtlasを用いることで、環境変動に対する土壌微生物の応答を定式化することができたばかりでなく、土壌以外のさまざまな環境における微生物群集の挙動を直観的に記述できることが明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
ProkAtlasを用いた微生物群集構造データのバイオインフォマティクス解析を継続するとともに、微生物群集の機能性や微生物間相互作用にも光をあてたメタアナリシスを展開する。これにより、土壌微生物群集の環境応答をより多角的に評価する方法論を構築する。
|
Research Products
(2 results)