2019 Fiscal Year Annual Research Report
動的な恒星進化計算から迫る、大質量星の超新星直前における激しい質量放出の起源
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19J14158
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大内 竜馬 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 超新星爆発 / 大質量星 / 質量放出 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書に記述した内容に沿って、Ouchi and Maeda (2019a)をThe Astrophysical Journalに出版、またOuchi & Maeda (2019b)をThe Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyに投稿中である。以下にこれらの論文の内容を述べる。 近年様々な観測事実から、一部の大質量星は超新星が起きる直前に、質量放出率が極めて高くなることかが明らかになってきた。このような爆発直前に放出された物質は、超新星と衝突するため、その観測的特徴に大きな影響を与える。しかし、爆発直前の高い質量放出率の物理的な起源については未だ解明には至っていない。 その起源の候補として、爆発直前の星の外層におけるエネルギー注入が挙げられている。しかし、そのようなエネルギー注入がどのような質量放出を起こし、超新星の観測的特徴にどれほどの影響を与えるのかは分かっていない。 Ouchi & Maeda (2019a)では、恒星進化計算に爆発直前におけるエネルギー注入をパラメータ的に取り入れることで、様々なエネルギー注入があった時に、どれ程の質量放出率が引き起こされまた超新星の観測的特徴にどれほどの影響を与えるのかを調べた。結果、エネルギー注入率が大きいほど、その後に続く超新星爆発は明るくなり、エディントン光度を超える場合は超新星が典型的なII型超新星と矛盾することがわかった。このことから典型的なII型超新星の外層におけるエネルギー注入率に制限を与えることに成功した。 Ouchi & Maeda (2019b)では、SN2009kfという非常に明るいII型超新星が、上述のエディントン光度を超えるようなエネルギー注入を爆発前に与えたモデルで説明できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね申請書に書いた通りに研究が進んでいると思われる。ただ、予期していたほどインパクトがある結果が得られなかったというのが正直な印象なため、今後は研究の方針を変更する方がいいと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進め方としては、2つの別個の方向を考えている。
まず、一つ目はこれまでの研究(Ouchi & Maeda (2019a))の延長である。本研究では、外層におけるエネルギー散逸をパラメータ的に与えた。このようなエネルギー散逸の物理的な由来としてはいくつか考えられるが、もっとも有力なのはコアから伝わる音波である。そこで、このような音波を外層の底から注入することで、実際にどのようなエネルギー散逸が起こるかを流体計算によって調べてみる。
二つ目は、全く新しい話である。超新星はいくつかに分類がなされいてるが、II型超新星というものは大質量の外層を保持した赤色超巨星が爆発したものと考えられている。一方、Stripped Envelope超新星というのは、進化の過程で外層が剥ぎ取られたような星の爆発である。超新星は、爆発に伴ってNiという元素を放出するが、このNiの質量がStripped Envelope超新星の方がII型超新星より多いことが近年の観測事実から分かってきた(Anderson (2019))。この起源は分かっていない。そもそもの爆発メカニズムが違う可能性なども指摘されてきたが、我々はこれは観測バイアスで説明できるのではないかと考え、調べている。より具体的にいうと、Stripped Envelope超新星のうち、Ni質量が小さいものは暗く観測で見つかりにくいため、Ni質量が大きいものばかりが見つかっているのではないかと考えている。この仮説を具体的に検証することが二つ目の課題である。
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[Journal Article] SN 2017czd: A Rapidly Evolving Supernova from a Weak Explosion of a Type IIb Supernova Progenitor2019
Author(s)
Nakaoka, Tatsuya; Moriya, Takashi J.; Tanaka, Masaomi; Yamanaka, Masayuki; Kawabata, Koji S.; Maeda, Keiichi; Kawabata, Miho; Kawahara, Naoki; Itagaki, Koichi; Ouchi, Ryoma; Blinnikov, Sergei I.; Tominaga, Nozomu; Uemura, Makoto
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 875
Pages: 76, 87
DOI
Peer Reviewed
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