2019 Fiscal Year Annual Research Report
爆発的元素合成より探る、重力崩壊型超新星の爆発機構
Project/Area Number |
19J14179
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤田 涼 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 重力崩壊型超新星爆発 / 爆発的元素合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
重力崩壊型超新星爆発(以下、超新星爆発)とは、宇宙で起きる壮絶な星の爆発である。そして、その爆発シナリオが提言されてから80年経ってなお、第一原理からの理論的再現に成功していない。本研究の大目標は、この天文学に未解決問題として残る「超新星爆発の爆発機構」の理解である。
2019年度の実績として、近年の第一原理からの大規模計算が実際に超新星の観測事実を説明できるか、中心領域のダイナミクスをシンプルなモデルに落とし込んだ数値計算より検証を行った。その結果、超新星爆発の中心領域で作られる鉄族元素と爆発にかかるタイムスケールの相関性を明らかにすることにより、観測される超新星を再現するために必要な爆発タイムスケールに現象論的制限を与えることに成功した。タイムスケールを爆発を特徴づける重要な物理量だと注目し、パラメータとして陽に操作するモデリングは本研究の独自の着眼点であった。そして観測されている超新星を説明するためには、近年の第一原理からの大規模計算はまだ重要な物理を見落としている可能性があることが分かった。
本結果は自身が筆頭著者の論文として国際査読誌(The Astrophysical Journal) にて発表されている(Sawada & Maeda, ApJ 2019)。またこの研究成果は、国際会議を含む10件の研究会で報告し、内2件で学会賞を受賞した。原子核分野から、Asian Nuclear Physics Association(ANAPhA)よりYoung Scientist Awardを受賞、宇宙物理学分野から、理論天文学宇宙物理学懇談会(理論懇)より若手発表賞を受賞した。 これらの成果が示すように本研究は、宇宙物理と原子核物理の両分野の垣根を越えて、未解決問題である超新星爆発の爆発機構の解明に向けて極めて重要な橋頭堡となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筆頭著者の論文(Sawada & Maeda, ApJ 2019)の受理、ならびに国際会議を含む10件の研究会で行った報告の内2件で学会賞を受賞した実績から、極めて順調に進展しているという判断が妥当と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要でも掲げた本研究の大目標に向けて、更なる爆発機構への制約を試みる。具体的に、Sawada & Maeda, ApJ 2019 の結果には超新星内部で起こる fallback による不定性が大きく残った。そして同時に、 fallback の物理が爆発機構の制約に重要な役割を果たす可能性が浮上してきた。今後この考察を深め、超新星内部の fallback の物理に関する新たな研究展開を遂行する予定である。その結果を論文にまとめるまでも目標の一つに加えたい。
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