2019 Fiscal Year Annual Research Report
内部磁気圏のULF波動によるイオン拡散とリングカレントの変動
Project/Area Number |
19J14222
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 和弘 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | ULF波動 / ドリフトバウンス共鳴 / リングカレント / 地磁気嵐 / あらせ衛星 / 内部磁気圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、地球磁気圏における磁力線の振動として現れるULF波動がリングカレントの粒子に与える影響の定量的評価を目的としている。そこで、Van Allen Probes衛星が観測した6年間のデータを調査し、観測されたpoloidal ULF波動(動径方向の磁力線振動)の性質と、ULF波動が観測された時の統計的なリングカレント粒子(プロトン)の分布関数の性質を明らかにした。
まず、リングカレントに影響を与えるULF波動として、長時間衛星で観測されるようなpoloidal ULF波動に注目した。poloidal ULF波動は、太陽風の動圧の擾乱などによっても生み出されるが、その場合はプラズマ不安定性によるものとは異なる粒子変動が起こる。こうした太陽風起源の波動は継続時間が短いため、イベントの観測時間から除外することができる。その結果、衛星で1.3時間以上観測されるpoloidial波動が70例以上観測された。そのうち45例のイベントについてはULF波動の波長推定が可能であり、大半が短い波長をもつ波であることが明らかになった。これらの波動は波動粒子相互作用(ドリフトバウンス共鳴)の結果励起したものと考えられ、波動が観測された時のプロトンの分布関数と平時の分布関数を比較してみると、共鳴条件を満たすエネルギー・位置(L値)において分布関数の顕著な変化が見られた。このことから、波動の励起によってリングカレント粒子が変動を起こしていたと考えられる。
この研究によって、磁気嵐に関連したULF波動の励起から粒子の変動までが明らかになり、磁気嵐時の磁気圏粒子の変動におけるULF波動の重要性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ULF波動とリングカレント粒子の相互作用の好例として、あらせ衛星やVan Allen Probes衛星の観測したULF波動の事例解析に取り組み、国際学会・国際学術誌(JGR誌)で発表している。これらの研究によって、ULF波動が励起する条件として、粒子の作る急峻な空間勾配が重要であることが明らかになってきた。この結果は学会での学生は発表賞や国際学会の招待講演の対象になるなど、高い評価を受けている。
さらに、ULF波動がリングカレント粒子に及ぼす影響について、統計的な解析を通してその定量的評価を行い、学会でその結果を発表しており、研究目的を達成しつつある。この研究では、ULF波動の発生に伴って、~100 keVのプロトンの分布関数が、共鳴条件を満たすところで顕著な変動を示すことを明らかにした。また、その変動分からリングカレントの強度に与える影響を定量的に見積もっている。その結果、ULF波動によるリングカレントの強度変化が、太陽風の動圧の変化によるそれと同レベルであることが明らかになった。磁気嵐時のpoloidal ULF波動の励起メカニズムについても取り組み、国内学会で発表して学生発表賞を受賞するなど、波動の及ぼすリングカレントへの影響のみならず、波動の励起源についても積極的に研究を進めている。
以上のことから、ULF波動の発生機構の解明に始まり、波動がリングカレント粒子に及ぼす影響までの一連の諸現象の総括的な理解が進んでおり、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、新たに見えてきた課題は重イオンの影響についてである。ULF波動が励起するには、波動の周期がドリフトバウンス共鳴の条件を上手く満たす必要がある。磁気圏の重イオンは磁気嵐の際に地球の電離層から放出され、プラズマ質量を大きくすることで、ULF波動の周期を長くする。これにより、うまく共鳴条件が満たされ、波動が励起している可能性が出てきた。この影響を考慮するためには、磁気嵐時に重イオンがどの程度含まれるようになるかを明らかにする必要がある。そのため、磁気圏プラズマの平均プラズマ質量について、磁気嵐の大きさを表すSYM-H指数や太陽放射の指数であるF10.7指数などを用いて、経験的なプラズマ平均質量のモデルを構築することを考えている。この際、プラズマ圏界面の位置が重要となる。プラズマ圏の内側では、基本的に重イオンの割合が小さいことが先行研究で示されているため、磁気嵐でも同様のことが成り立つが注意する必要がある。
また、粒子の動径方向の拡散を理解するには、数値シミュレーションによる検証が有益である。衛星の観測データからは、どうしても空間的な広がりを捉えにくいためである。現在開発中のテスト粒子シミュレーションではdipople磁場中にULF波動のつくる磁場と電場を再現し、粒子の変動を見ることができる。観測データで得られた波動のパラメタを利用してシミュレーションを行い、動径方向の輸送について調べる予定である。
|
Research Products
(9 results)
-
-
[Journal Article] Eastward Propagating Second Harmonic Poloidal Waves Triggered by Temporary Outward Gradient of Proton Phase Space Density: Van Allen Probe A Observation2019
Author(s)
K. Yamamoto, M. Nose;, K. Keika, D. P. Hartley, C. W. Smith, R. J. MacDowall, L. J. Lanzerotti, D. G. Mitchell, H. E. Spence, G. D. Reeves, J. R. Wygant, J. W. Bonnell, S. Oimatsu
-
Journal Title
Journal of Geophysical Research: Space Physics
Volume: 124
Pages: 9904-9923
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
[Presentation] Eastward Propagating Second Harmonic Poloidal Waves Triggered by Temporary Outward Gradient of Proton Phase Space Density: Van Allen Probe A Observation2020
Author(s)
K. Yamamoto, M. Nose, K. Keika, D. P. Hartley, C. W. Smith, R. J. MacDowall, L. J. Lanzerotti, D. G. Mitchell, H. E. Spence, G. D. Reeves, J. R. Wygant, J. W. Bonnell, S. Oimatsu
Organizer
EGU2020
Int'l Joint Research / Invited
-
[Presentation] Giant Pulsations Excited by a Steep Earthward Gradient of Proton Phase Space Density: Arase Observation2019
Author(s)
Kazuhiro Yamamoto, Masahito Nose, Satoshi Kasahara, Shoichiro Yokota, Kunihiro Keika, Ayako Matsuoka, Mariko Teramoto, Kazue Takahashi, Satoshi Oimatsu, Reiko Nomura, Massimo Vellante, Balázs Heilig, Akiko Fujimoto, Yoshimasa Tanaka, Manabu Shinohara, Iku Shinohara, Yoshizumi Miyoshi
Organizer
27th IUGG General Assembly
Int'l Joint Research / Invited
-
-
-
-
-