2019 Fiscal Year Annual Research Report
不妊治療と仕事の両立に関する実証研究―両立の規定要因と支援制度に着目して―
Project/Area Number |
19J14335
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺澤 さやか 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 不妊治療 / 女性就労 / ワーク・ライフ・バランス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、少子化の進行や不妊治療の普及・拡大に伴い、政策課題としても焦点が当たる「不妊治療と就労の両立」について、①どのような個人要因と②職場環境のもとに両立が可能となるのか、そして、いかなる③企業内での両立支援制度と④国・自治体による両立支援制度が必要かを明らかにすることを目的とする。 以上の目的のもと、2019年度は次の3つの課題に取り組んだ。第一に、不妊治療へのアクセスと所得階層との関連の検証である。不妊治療の経験者を対象とした質問紙調査の二次分析から、不妊治療の中でも生殖補助技術を用いる治療(体外受精・顕微授精)へのアクセスは、所得階層により分断されていることを明らかにした。また、この成果について、国際学会(The 16th Annual Conference of East Asian Social Policy Network)で報告を行なった。 第二に、就労しながら不妊治療を行う女性の職場経験についての検討である。先行研究においては、不妊治療と就労の両立のためには、職場で不妊治療を行なっていることについて開示することが重要であると指摘されてきた。本研究では、職場で不妊治療について開示することの限界とその背景について、インタビュー調査を通じて検討を行った。この成果は、査読付き論文として『ソシオロゴス』に掲載が決定しており、2020年度に公刊される予定である。 第三に、不妊治療の各治療段階へのアクセスと社会経済的階層および就労状況との関連の検証である。この目的のため、不妊治療を考えたことがある30代既婚女性を対象としたモニター調査を設計・実施した。本調査で得られたデータは2020年度に分析を行い、学会発表、論文投稿をする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、成果発信の面では「The 16th Annual Conference of East Asian Social Policy Network」で二次分析の成果の口頭報告を行い、国内外の研究者から有益なコメントを得ることができた。また、インタビュー調査の成果は、査読誌である『ソシオロゴス』に採択された。 そして、調査実施の面では、予定していたインタビュー調査を実施するとともに、二つの大規模な質問紙調査を設計し、うち一つは実施済み、一つは2020年度に実施予定である。これらのデータ収集および分析を通じ、本研究課題は大きく推進することが見込まれる。したがって、現在までの進捗状況は、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は不妊治療へのアクセスを規定する要因を検証するためのデータ収集を行い、分析・論文執筆には取り組み始めた段階であった。したがって、今後は収集したデータについて分析および論文執筆を進め、その研究成果を広く発信することが第一の推進方策である。 第二に、2020年度は、不妊治療を行う医療機関において、医療機関に通院する者を対象とした質問紙調査を実施する予定である。したがって、この調査を実施した上で、不妊治療と就労の両立のために必要な職場環境や、有効な両立支援施策について、雇用形態や業種・職種に着目しながら明らかにすることが第二の推進方策である。
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