2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J14374
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邊 成晃 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | ALS / FTLD / FUS / transmission / arginine hypomethylation / oligomerization |
Outline of Annual Research Achievements |
アデノ随伴ウイルス発現系を用いてマウスの中枢神経系特異的に蛍光タンパク質とFUSを共発現する実験系 (AAV9-FUSマウス) では、ドナー神経細胞周囲のレシピエント神経細胞内に、伝播したFUSの局在が観察され、FUSが神経細胞間を伝播した可能性が示唆された。そこで本研究では、FUS細胞間伝播の定量化のため、培養細胞モデルを作出した。私はbi-molecular complementation assayを利用し、FUS同士の会合をsplit-luciferase の再構成レベルとして定量化する実験系の構築に成功した。そこで、この実験系を応用し、LgBiT-FUS、SmBiT-FUSをそれぞれ異なる細胞に遺伝子導入し、共培養実験を行った (FUS伝播センサー細胞)。FUS伝播センサー細胞では、伝播したFUS同士が会合し、split-luciferase が再構成され、細胞間伝播を定量することが可能であることを示した。細胞間伝播には、ドナー細胞からの放出機構、及びレシピエント細胞への内在化機構が関与すると考えられる。そこでFUS伝播センサー細胞を用い、FUSの細胞間伝播が、既知の放出及び内在化機構を利用している可能性を考え、放出機構としてconventional secretion、unconventional secretion、exosome、autophagic secretion、tunneling nanotube、内在化機構としてclathrin mediated endocytosis、caveolae mediated endocytosis、pinocytosis、phagocytosis、などの様々な細胞現象に関わる既知分子のノックダウン実験や特異的阻害剤による薬理学的検討を行うこととした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私はこれまでにALS病因タンパク質FUSが伝播により病変を拡大する可能性を考え、FUSの神経細胞間伝播の可視化モデルを作出、FUS伝播測定モデルの構築を行いました。それらの実験モデルを活用して薬理学的、遺伝学的にFUSの放出、取り込み機序の解析を行いました。さらに、近年FTLD患者脳の大脳新皮質神経細胞の細胞質にunmethylated FUSが蓄積することに着目し、FUSのアルギニン低メチル化が伝播に与える影響の解析に精力的に取り組みました。FUSの低メチル化 (hypomethylation) と細胞間伝播の関係を明らかにするため、methyltransferase inhibitorであるadenosine-2’,3’-dialdehyde(AdOx)をFUS伝播センサー細胞に添加し、1日間培養後、ウェスタンブロット法で細胞内のtotal FUS, ADMA (dimethylated) FUS, MMA (monomethylated) FUS, UMA (unmethylated) FUSを検出しました。その結果、AdOxによりADMAは減少し、MMA、UMAは増加することが分かりました。一方、細胞内の発光を測定するとAdOx添加により発光が顕著に増加しました。このことはFUSのhypomethylationが細胞間伝播を促進することを示唆していると考えられました。これらの結果に基づき、FUSの細胞間伝播はアルギニンのhypomethylationを介しているのではないかと考えており、さらに生化学的解析を進めています。その結果、昨年秋にはアメリカ、シカゴにて行われたSociety for Neuroscience 2019においてポスター発表を行い、自らの研究について他国の研究者と議論を交わしました。その経験は、私の将来に大変有意義であったと考えられます。
|
Strategy for Future Research Activity |
私はこれまでの実験からFUSのhypomethylationが細胞間伝播を促進することを示唆しているのではないかと考えました。そこで、①FUSのどのアルギニンのhypomethylationが伝播に重要なのか、②hypomethylationが、FUS oligomerizationを介して、伝播に関与するのか、あるいは oligomerizationとは無関係に伝播に関与するのか、③hypomethylationがどのような分子機序で伝播を促進するのか、ということについて明らかにする予定です。①についてはFUSのアルギニン‐アラニン変異体(RA FUS)を発現する伝播センサー細胞を作出し、AdOxを処理したときに、細胞内の発光が増加するかを検討します。もし、細胞内の発光が増加しないRAFUSを見つけることができれば、その部分のアルギニンのhypomethylationが重要であると考えられます。②については青色光下において自己重合能を有するCRY2を融合したCRY2-FUS発現モデルを作成し、青色光を照射したときにoligomerizationは促進されるのか、hypomethylated FUSが増加するのか、細胞間伝播は増加するのかについて、免疫細胞化学染色、伝播センサー細胞を用いて検討する予定です。③について、hypomethylationがtransmissionに必要なのかをin vivoの系で検討するため、AAV9発現系を用いて、中枢神経系にPRMT1を発現させ、FUSのmethyl化の亢進と伝播現象の抑制が観察されるのか、免疫組織化学的検討を行います。さらに、伝播分子種の増大、放出、取り込み機構が亢進されるのかを明らかにするため、 細胞外に放出されたFUSの分子実態を明らかにし、安定的な定量系を確立する予定です。
|