2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a methane-oxidizing biocatalyst that functions in a heterologous host using a single-cell methanol sensor
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19J14379
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹谷 友之 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | メタノール誘導性遺伝子発現 / メタン酸化生体触媒 / メタノール生成反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)一細胞酵素活性可視化宿主『メタノールセンサー酵母』を用いて高活性MOB遺伝子を精度よく選抜するため、グルコースを含む培地からメタノールを含む培地に細胞を移した際にメタノール誘導性遺伝子が受ける「グルコース抑制」「脱抑制」「メタノール誘導」について、本センサー酵母を用いて詳しく解析した。その結果、脱抑制はグルコースが急激に枯渇すると見られないのに対し、グルコースが徐々に枯渇すると顕著に見られることを明らかにした。本知見は高活性MOB選抜のための培養条件の最適化に有用であるとともに、本酵母のメタノール誘導性遺伝子発現制御を理解する基盤としても重要と考えられる。 (2)MOBプロトタイプについて、アミノ酸配列の変異による高活性化を試みたところ、pmoAサブユニット由来断片への変異の導入により、活性が著しく向上、もしくは見られなくなることがわかった。本知見は、触媒部位の構造形成におけるpmoAサブユニット由来断片の寄与を新たな形で示唆するものであり、銅を含む活性中心を主として議論されてきたメタン酸化の触媒機序にも新しい展開をもたらすと考えられる。活性が向上した変異体については目的のメタン酸化生体触媒の候補と位置づけており、現在、精製タンパク質を用いた活性評価、および本変異体発現細胞によるメタンのバイオマスへの取り込みなどについて、さらなる検討を加えている。また、自然界由来の遺伝子断片の増幅と連結による遺伝子ライブラリも追加で作製し、現在、メタノールセンサー酵母を用いて高活性タンパク質遺伝子の選抜を試みている。 (3)天然資源からのメタノール生成反応のさらなる一例として、細菌によるメタノールのバイオマスへの固定反応の大腸菌内での逆行を試み、菌体反応によりグルコースやF6Pからメタノールが生産されることを見出し、自然界で知られていないメタノール生成経路の構築と実証に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である異宿主で機能するメタン酸化生体触媒の創製については、『研究実績の概要』(2)に示したように、これまでに開発したMOBプロトタイプの高活性化、その変異体ライブラリや自然界からの遺伝子断片の収集など、おおむね順調な進展が見られた。加えてその過程で、『研究実績の概要』(1)や(3)に示したように、メタノールの生成反応や生物による利用について、基礎的にも応用的にも画期的な成果を数多く得た。(1)に記した酵母におけるメタノール誘導性遺伝子発現のダイナミクス解析は、高活性MOBを選抜する精度の大きな向上につながるのみならず、本酵母の代謝リプログラミング過程を個体レベル・集団レベルに分けて可視化した点で、そのメカニズム解明に新たな方向づけをもたらしたと考える。(3)のメタノール資化代謝の異種生物における逆行代謝は、「C1化合物変換反応の利用を目指す合成生物学」分野に新規のコンセプトをもたらす点に意義がある。以上を総合し、本研究課題は現在までおおむね順調に進展してきたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られているMOBについては、活性を引き続き高めていくことに加え、活性の詳細な評価が必要と考えている。よって、メタノールセンサー酵母による活性評価に加えて、精製酵素を用いた比活性の測定、MOB発現細胞によるメタン変換効率のメタボロミクスによる解析を、今後進めていく。現在、その予備的な検討に入っている。一方、sMMOについてはシャペロン様因子の同時発現、活性中心周辺の構造が似ている他のタンパク質とのキメラ作製などに取り組み、可溶性の向上など一定の成果を上げたものの、活性の検出には至っていない。現在、活性発現が可能なsMMO由来MOB変異体の取得に向け、センサー酵母による活性評価、および抗生物質耐性遺伝子をマーカーとする可溶性評価、それぞれを指標としたスクリーニング系の構築を進めており、今後の推進においてはライブラリサイズの拡大や選抜サイクルの回数がカギと考えている。
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