2019 Fiscal Year Annual Research Report
職種からみる育児期女性の就業実態に関する実証分析:国際比較と時系列比較
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19J14416
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小松 恭子 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 女性就業 / 職種 / スキル / 出産・育児期 / 再就職 / 男女賃金格差 / 国際比較 / PIAAC |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①全国就業実態パネル調査(2016年~2018年)及び②OECDの国際成人力調査(PIAAC)の個票データを使用した分析を行い、学会報告および論文の発表を進めた。 ①全国就業実態パネル調査を用いた研究では、先行研究と比べてより新しい世代(1970年~1996年生まれ)の女性の出産離職後の再就職行動について分析を行った。具体的には、①どのような学歴や職種経験を有する女性が、出産離職後早期に再就職しやすいのか、②どのような職種経験を有する女性が、前職と同一職種で再就職しているのか、について検証した結果、次の4点が明らかになった。第1に、大卒以上の高学歴女性は早期に再就職しやすいが、正規雇用ではなく、非正規雇用として再就職しやすい。第2に、医療福祉専門職や営業職は早期に再就職しやすい。第3に、ホワイトカラー職である事務職や専門職の中では、医療福祉専門職が同一職種へ再就職しやすい。第4に、既婚女性が同じ職種に再就職できるかどうかは、前職の勤続年数や前職離職後の無業年数によるが、そのパターンは職種によって異なる。 ②OECDのPIAACを活用した研究では、日本女性の就業実態や男女賃金格差について、スキルや職種に着目し、ノルウェーやイギリスの女性との比較をしながら分析を行い、次のとおり、暫定的な分析結果を得た。第1に、日本では、他国と比較し、高学歴・高スキル女性が就業しないで、専業主婦である割合が大きい。第2に、日本の女性は、他国と比べて、医師・科学技術職・IT専門職・ビジネス関係専門職など、男性比率の高い職業に就く女性が少ない。第3に、日本の女性(特に子供のいる女性)の賃金ペナルティは、他国と比較して大きく、日本の男女賃金格差(特に子供のいる女性の賃金ペナルティ)は、主に、雇用形態の違いに起因している。第4に、日本では、他国と比べて、職種が賃金へ与える影響が小さい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①の研究については、査読付き論文として、『人間文化創成科学論叢』に掲載され、②の研究については、暫定的な分析結果を、人口学研究会をはじめ複数の研究会において報告した。また、スウェーデンで行われたヨーロッパ労働経済学会に参加し、スキル・タスクと雇用や賃金との関係に関する海外の最新の研究動向について情報収集を行うとともに、スウェーデンにおける女性就業に関するインタビューを行うなど、本研究に関係する海外の先進事例についての知見を得ることができたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
①の研究で得られた出産離職後に高学歴女性が非正規雇用で再就職しやすいという結果は、1970年代前半以前生まれの女性を対象としている先行研究とは異なる結果であった。これについて、今後、政府統計など他のデータで結果の頑健性を検証した上で、新しい世代で高学歴女性の再就職行動に変化がみられるのであれば、それはなぜなのか、その要因について分析を深めていきたいと考えている。 ②の研究の成果については、次年度に国際学会において報告し、論文の投稿につなげていく予定である。
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