2019 Fiscal Year Annual Research Report
CMB観測に基づく適切なインフレーションとその後の初期宇宙の探索
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19J14449
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
秋田 謙介 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 初期宇宙 / 宇宙背景ニュートリノ / 精密計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙背景ニュートリノ(CνB)は初期宇宙で生成され、現在の宇宙に存在すると考えられているニュートリノで、これは宇宙誕生から約1秒後の宇宙の情報を私たちにもたらすと期待されています。CMBの温度非等方性、宇宙の軽元素量と大規模構造の観測は、ニュートリノ有効世代数というパラメータに制限を課し、この値が標準模型におけるニュートリノ世代数である3に近いことから、CνBの存在が裏付けられています。そして、将来のCMB観測では、ニュートリノ有効世代数をおよそ1%の精度で観測することができると期待されています。一方で、将来、CνBが直接観測されると、私たちは、ニュートリノ有効世代数に加えて、より多くの初期宇宙の情報を手に入れることができると期待できます。そこで、将来の直接・間接観測に向けて標準模型の枠組みで宇宙背景ニュートリノの定式化を行いました。特に、過去から現在までのCνBスペクトルを最も精度良く明らかにし、ニュートリノ有効世代数をこれまでの最高精度で評価しました。 まず、将来のCMBの精密観測のために、電磁相互作用による有限温度効果の高次の寄与まで初めて取り入れてニュートリノの運動方程式を解き、脱結合後のスペクトラムを明らかにしました。そして、このスペクトラムに基づき、ニュートリノ有効世代数をこれまでの最高精度で評価しました。さらに、現在の宇宙ではいくつかの世代の宇宙背景ニュートリノは非相対論的であるため、質量が対角化された基底でのスペクトラムは、将来の直接観測に向けて有用です。このため、質量が対角化された基底での一様等方宇宙でのスペクトラムの運動方程式の定式化を初めて行い、そのスペクトラムを明らかにしました。今後、将来の観測から示唆されるスペクトラムと本研究で評価したスペクトラムの違いから標準模型を超えた多くの物理に強い制限を課すことが期待できます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、将来のCMBの精密観測を通じて、初期宇宙を理解するために理論を整備することが目的でしたが、本年度においては、これに加えて、CνBの直接観測によって、より初期宇宙を理解するために、過去から現在までのCνBスペクトラムの定式化・精密評価を行いました。これにより、将来のCMBの精密観測によるニュートリノ有効世代数の値が標準模型を支持しているかどうかをより高精度で判断できるようになる上に、CνBが直接観測に向けて、現在の宇宙でのCνBスペクトラムを従来より高精度で明らかにしました。これらの成果はCMBの精密観測・CνBの直接観測により宇宙を理解する上で非常に重要であり、本年度の研究は当初の計画以上に発展していると言えます。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、一様等法宇宙のもとで、ニュートリノスペクトラムを評価していましたが、初期宇宙に生成されたと考えられる宇宙の非等法性も考慮して、ニュートリノスペクトラムを評価することを考えています。この時、今回の研究において用いたスペクトラムの計算手法やCMBの非等方性の評価のための計算手法を応用して解析を進めることを考えています。
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