2019 Fiscal Year Annual Research Report
大規模災害後の避難先定住プロセスに関する研究 環境移行を考慮した復興計画に向けて
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19J14477
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須沢 栞 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 遠隔地避難 / 広域避難 / 居住地選択 / 借上型仮設住宅 / 災害公営住宅 / 世帯分離 / 東日本大震災 / 盛岡市 |
Outline of Annual Research Achievements |
大規模災害後に、市町村や県境を跨いで遠隔地へと避難する被災者が一定数存在するものの、それらを選択する世帯の情報は乏しく、現行制度による支援体制も十分とは言えない。本研究では、東日本大震災での①盛岡市を対象としたケーススタディと、②自治体ごとの行政対応の整理を行った。 ①:岩手県の内陸市町村のうち、県内からの避難者が最も多いと推定される盛岡市で調査を実施した。盛岡市の被災者支援組織から提供を受けたデータ(約1,000世帯分)の集計を行い、世帯属性や居住地、住宅種別の変遷、盛岡市に避難した理由といった基本情報を量的に把握した。盛岡市に避難した多数派の傾向(借上型仮設住宅、盛岡市に親族がいる、単身や夫婦の高齢者等)を把握した一方で、少数派の状況(親族宅への居候や民間賃貸住宅に家賃を支払い入居、被災で失職した若年層等)も部分的に明らかになってきた。また、被災後に世帯分離や統合といった世帯構成を変化させている世帯も一定数存在し、それにより既存の住宅支援の枠組みから外れるといった課題も明らかになった。次年度は統計的手法を用いて居住地・住まいの選択経路、世帯属性、住まいの取得に伴う課題等について類型化を行い、どのような世帯がどのような選択を取っているか、どのような状況において課題が生じているのかを整理する予定である。 ②:岩手県と宮城県の行政対応について文献調査から両者の比較を行ったところ、宮城県では被災者の生活支援等を応急仮設住宅に入居している世帯を対象としているのに対し、岩手県では自力で住宅を確保した世帯も対象としている点、被災者が市町村を跨いだ状況に対応し岩手県では県が主導となって災害公営住宅を整備しているのに対し、宮城県では市町村主導となっているといった違いが確認できた。次年度は各自治体へのインタビューを行い、より詳細な情報や市町村レベルでの対応の違いを把握する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
盛岡市の全世帯のデータを取得し、集計を行うことで基本情報および概況を把握できた。今後、統計的分析や自治体職員へのインタビューを実施する予定であるが、次年度中に遂行可能であると考えるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた成果と追加調査と分析を行うことで、世帯属性や居住地選択の類型化および課題の生じやすい状況の抽出を行い、今後の利用可能な知見へと昇華させることを試みる。 なお、当初は仙台市も詳細調査の対象としていたが、調査協力を得られる被験者が少ないため、全数調査が実施可能な盛岡市を重点的に調査・分析することとする。 また、盛岡市では被災者を対象としたインタビューを実施する予定であったが、感染症リスクを考慮した上で実施の判断を行う。被災者を対象としたインタビューを中止する際には、支援職員への電話インタビュー等を行うなどしてデータの補足を行う。
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Research Products
(6 results)