2019 Fiscal Year Annual Research Report
心臓の自律神経調節における亜鉛シグナル伝達の分子制御機構の解明
Project/Area Number |
19J14538
|
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
小田 紗矢香 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 心筋細胞 / β受容体 / TRPC6 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、TRPC6欠損マウスでβ受容体刺激に対する心筋収縮応答の増大が抑制されることを見出した。本年度はTRPC6特異的な心筋収縮応答制御のメカニズム解明を目的として、以下の検討を行った。 (1)TRPC6が心筋収縮関連因子に与える影響の検討:心収縮応答制御に関連する因子として、カルシウムシグナルに関与するものが多く報告されている。そこで野生型とTRPC6欠損マウスの心臓サンプルにおいて、定常時のカルシウムシグナル関連因子の発現解析をRTPCR及びgene chip assayを用いて行ったところ、差は見られなかった。またラット胎児初代心筋細胞を用いた細胞内cAMP動態測定系、一定の電気刺激を与える条件下で成獣マウス心筋細胞を用いたCa2+イメージングの系を立ち上げた。この系を用い、TRPC6の発現の増減によってβ受容体シグナルにどのような影響があるか解析を行った。 (2)TRPC6による受容体制御に関与するTRPC6特異的配列の探索:TRPC6と性質・機能が類似したTRPC3/7とTRPC6のアミノ酸配列の比較によりTRPC6によるβ受容体シグナル制御に関与するTRPC6特異的配列の探索を行った。候補配列としてTRPC6 pore領域の2アミノ酸に着目し、TRPC6、TRPC3/7のアミノ酸を相互に入れ替えたミュータントおよび安定発現株の作成を進めた。 (3)β受容体慢性刺激実験:4週間の慢性的なβ受容体刺激により病態時を模倣したマウスモデルを用い、慢性期におけるTRPC6のβ受容体シグナルへの関与を検討した。野生型マウスでは、慢性的なβ受容体刺激により心重量の増大、心機能の低下が認められた。一方、TRPC6欠損マウスではより強い心重量の増大がみられたが、心機能は維持されていた。また、慢性的なβ受容体刺激によって左心室のTRPC6の発現が上昇していることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はβ受容体シグナルに対するTRPC6の影響を解析するための実験モデルの構築および基礎データの取得を行った。その結果、この系を用いてTRPC6が確かにβ受容体シグナルに影響を与えることを示唆するデータが得られているため、概ね順調に進んでいると評価できる。また、慢性投与実験により、急性期のみならず慢性期においてもTRPC6によるβ受容体シグナルの制御が行われていることを示すデータを得ることが出来たことも、上記の評価をした理由の一つである。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度立ち上げたラット胎児/成獣マウス初代心筋細胞の実験系およびTRPC6 pore領域アミノ酸改変ミュータント安定発現株を用い、以下2つの観点から、より詳細なメカニズム解析を行う。 (1)TRPC6特異的なβ受容体シグナル制御メカニズム ①TRPC6 pore領域アミノ酸改変ミュータント安定発現株を用い、β受容体シグナルへの影響を検討する。この検討には、BRET法によるβ受容体とGタンパクおよびβアレスチンの共役、cAMP probeおよびELISA法を用いた細胞内cAMP動態の解析を用いる。②TRPC6 pore領域アミノ酸改変ミュータント安定発現株における、細胞内亜鉛イオン(Zn2+)プールの変動をイメージングによって解析する。またZn2+キレーターによる細胞内Zn2+の低下によってβ受容体シグナルに影響があるか上記解析方法を用いて検討する。 (2)TRPC6を介したβ受容体シグナル制御と心収縮制御の連関 ①心臓におけるTRPC6の発現分布が心収縮制御に影響を与えているか検討するため、心臓全体におけるTRPC6の発現分布をin situ hybridization法を用いて解析する。②初代心筋細胞に対するZn2+キレーターの処置により、心筋細胞の収縮応答にどのような影響があるかイメージング法を用いて検討する。③内因性リガンド(Norepinephrine)を用いて、TRPC6を介したβ受容体シグナル制御の生理的意義を、初代心筋細胞を用いた収縮応答の解析、細胞内cAMP動態のイメージングによって解析する。
|