2019 Fiscal Year Annual Research Report
キラルなマルチヘリシティー構造が生み出す集積型湾曲π共役分子の創製
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19J14567
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
細川 朋佳 大阪府立大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | パラジウム触媒 / 反応機構 / 六重ヘリセン / ヘリセニルアライン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近年活発に研究が展開されている非平面π共役多環芳香族分子の新たな合成戦略として、ヘリセン上に発生させたアラインを活用し、ユニークな構造、物性を有する高次多重ヘリセンを創製することである。 以前の報告では、パラジウム触媒存在下での[5]ヘリセニルアライン前駆体の[2+2+2]環化三量化反応により、C2対称性を有する六重ヘリセンが立体選択的に生成するという結果を得た。また生成した異性体は、溶液中で加熱するとエネルギー的に最安定なD3対称異性体へと異性化できることを明らかにしている。 本年度は、既に報告している六重ヘリセンの立体選択性を解明するため、理論科学計算を用いた検討を行なった。既報の反応機構を参考にし、2つの[5]ヘリセニルアラインとパラジウムからなる5員環パラダサイクル中間体ともう1分子のアラインが反応し、C2異性体、またはD3異性体を生成する経路について検討を行なった。計算の結果、5員環中間体のパラジウム-炭素結合間にもう1分子のアラインが挿入することでエネルギー的に優位な7員間中間体を与えた。またこの時、新しく形成されるヘリセン部位のキラリティーはP体となった。C2異性体を生成する経路では、還元的脱離のステップが最も高い活性化障壁であり、そのエネルギー値は18.3kcal/molであった。一方、D3異性体を生成する経路も同様に進行し、分子内側にP体のヘリセン部位が形成されるが、D3異性体の内側のキラリティーは全てM体となる必要があるため、挿入されたアラインの反転が必要となる。この反転に必要となるエネルギー値が80.5kcal/molと非常に大きいため、C2異性体の経路が優先的に進行するという実験結果を支持する結論が得られた。また各ステップの反応速度定数を求め、300K、および400Kにおいてシミュレーションを行い、各異性体のモル濃度の変化を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以前合成を報告している六重ヘリセンの立体選択性を解明し、論文として報告することには成功したが、当初合成を計画していた十五重ヘリセンの合成が未だ達成されていないことから、やや遅れているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに合成している[5]ヘリセニルアラインと1,4-ベンゾジイン前駆体の[2+2+2]環化三量化反応により、三つのヘリセン構造を持つ新たなアライン前駆体の合成について検討を行う。その後、得られた前駆体のさらなる[2+2+2]環化三量化反応により十五重ヘリセンの合成を目指す予定である。
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Research Products
(4 results)