2019 Fiscal Year Annual Research Report
Rural geographical research on agricultural water management interpreted from scale
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19J14588
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷口 晴彦 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 農業水利 / スケール / 行政領域 / 水利研究 / 農村地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
年度前半は,第1に,前年度から取り組んでいる研究課題を進展させ,その成果を発表した。現代の農業水利は,管理地域の大規模化や地域の非農業主体との深い関係性を特徴とする。農業水利にかかわる大小様々な空間的広がりをもつ主体・事象の相互関連性に着目し,地域的な事象や課題の把握を進めてきた。国家や都道府県といった行政領域における大スケールと農業水利管理地区スケールの間で見られる様々な事象の関係性について,大阪府泉北地域の事例から分析した。その研究成果は,2019年5月下旬に開催された兵庫地理学協会2019年度春季例会において口頭発表した。 第2に,自身がこれまで調査対象地域としてきた大阪府泉北地域の事例の比較対象とするため,より広域な水利体系を持つ天竜川流域における現地調査を実施した。これによって,より広域なスケールに関わる議論にまで研究を進展させることができた。天竜川流域の調査では,天竜川の集水域内ではないものの天竜川から用水を流すことができる愛知県の豊川用水に着目して,空間スケールと農業水利の関係を見る視点から調査・分析を行った。具体的には,豊川用水管理の組織体制や運用について聞き取り調査を実施し,その全体像の把握を行った。 年度後半は,欧米圏の地理学で盛んに議論されているスケール論について整理を行い,農村地理学や水利研究における議論への援用を考察した。その上で,大阪府泉北地域における農業部門の災害対策に関する現地調査を行い,農業水利施設の維持・利活用をめぐる行政と土地改良区の関係を分析し,その成果を発表した。農業水利を取り巻く,国家や都道府県といった大スケールと水利組織の関係性は,近年の災害対策の取り組み・事象から顕在化できると考え,聞き取り調査を実施した。その成果は,2020年3月下旬の日本地理学会2020年春季学術大会で口頭発表した(開催中止・発表成立扱い)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,学会誌への学術論文投稿の遅れや年度内に予定されていた大阪府泉北地域を対象とする現地調査1件の延期(新型コロナウイルスの感染拡大防止のため)があった。しかし,大阪府泉北地域と愛知県東三河地方を対象とした現地調査の実施および2件の学術会議での口頭発表を行うことができたことから,おおむね順調であると判断している。 2地域を対象とした現地調査によって,国や都道府県といった大スケールと農業水利地域の関係性について資料・データを収集することができた。これらの調査結果をもとに分析・検討し,その研究成果を2件の学術会議での口頭発表によって公表した。これらの口頭発表によって,先行するスケール論や水利研究,農村地理学研究に関する議論の整理と学術論文の投稿に向けて研究の方向性の確認を行うことができた。次年度は,これらの再検討・修正を行い,学会誌への学術論文の投稿・受理を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に実施した現地調査や資料調査で収集された資料・データを再度整理しつつ,農業水利が国家・都道府県スケールの事象にいかに組み込まれているかについて分析した成果を学会誌に投稿する。その際,スケール論について整理を行い,農村地理学や水利研究における議論への援用を再度検討する。 加えて,対象地域である大阪府泉北地域における農業水利の歴史的事象を整理するため,地域資料の収集を行う。そして,示された歴史的事象についてスケール論を交えて分析・論述を行う。この成果を学術雑誌に投稿する。 さらに,集落スケールの事象の中において,農業水利がどのような人々の関係性を形成しているか,その全体像を把握・分析するため,大阪府泉北地域の集落を対象にして現地調査を実施する。この分析結果について,これまで整理してきたスケール論と農村地理学・水利研究との関係性を踏まえて論じる。その成果を学術会議で発表する。その後,指摘をもとに必要に応じて再整理・修正を行い,論説の作成および学会誌への投稿を目指す。 これまでの調査・研究成果をもとに,空間スケールの視点から,集落から農業水利管理地区全体や国家スケールに至る多様な主体・事象の相互関連性に着目し,農村における地域的な課題の明確化とその課題の解決策を示すことを通して,博士論文の構築・作成を進める。
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Research Products
(2 results)