2019 Fiscal Year Annual Research Report
末梢感覚神経レベルでのアドレナリン作動系による新規痛み緩和機構の解明
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19J14595
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松下 有美 山口大学, 大学院連合獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 鎮痛メカニズム / 末梢神経系 / TRPV1 / α2アドレナリン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物には痛みを感知する機構に加えて緩和する機構も備わっている。α2アドレナリン受容体 (α2受容体)は痛みの緩和に寄与していることが報告されており、中枢神経系ではα2受容体による鎮痛について多くの研究がなされてきたが、末梢神経系ではほとんどされてこなかった。本研究では痛み感知分子の一つであるTRPV1チャネルとα2受容体の機能的関連性について行動学的実験、免疫組織学的実験、生化学的実験により検証した。 まず初めに、行動学的実験によりTRPV1とα2受容体の機能的関連について検討した。ラットの足の裏にTRPV1を活性化させる刺激であるカプサイシン、侵害性の熱、ホルマリンを与えると疼痛関連行動が見られた。この行動はα2受容体作動薬であるクロニジンをそれらの刺激適用箇所へ前投与すると減弱した。一方、刺激を適用した足とは反対側の足底へクロニジンを投与してもこれらの疼痛関連行動は減弱しなかった。以上の結果から、カプサイシン等によって誘発された疼痛関連行動のクロニジンによる抑制作用は全身性ではなく、クロニジンを投与したその局所で生じる局所性作用であることが示唆される。また、背根神経節を用いた免疫組織学的実験及び生化学的実験により、TRPV1とα2受容体が同一の神経細胞体に発現していること、主に3つのサブタイプ (α2a受容体, α2b受容体, α2c受容体)に分類されるα2受容体のうちα2c受容体のmRNA量が最も多く、続いてα2a受容体、α2b受容体の順に多いことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに行動学的実験、免疫組織学的実験、生化学的実験が進んでいる。これらの研究で得られた成果を北米神経科学学会(Neuroscience 2019)、第162回日本獣医学会学術集会等で発表した。現在はこれまでの研究成果を学術論文としてまとめ、国際誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、TRPV1とα2受容体の機能的関連性について細胞レベルでより詳細に検討する。具体的には、ラットの背根神経節からTRPV1と各α2受容体サブタイプ (α2a, α2b, α2c受容体)のDNAをクローニングし、HEK293細胞等の株化細胞にTRPV1とα2受容体サプタイプのうちどれか一つを強制共発現させてこれらの二つの分子について電気生理学的実験により機能的関連性をそれぞれ検証する。また、これまでの研究からα2受容体を介したTRPV1活性の抑制作用に脱リン酸化反応が関与していることが明らかとなっている。TRPV1には様々なリン酸化酵素のターゲットとなるリン酸化サイトが存在し、リン酸化によってチャネル活性が増強することが報告されている。そこでTRPV1活性の抑制にTRPV1分子自身の脱リン酸化反応が関わっているのかを検討する。TRPV1のアミノ酸配列中に存在する、リン酸化酵素の標的サイトのセリン/スレオニンを別のアミノ酸に置換したTRPV1分子を作製し、株化細胞へα2受容体と共に強制発現させて抑制作用がみられるかを検討する。
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