2019 Fiscal Year Annual Research Report
人のつまずき回避能力を向上させるワイヤ駆動型歩行訓練ロボットの制御手法構築
Project/Area Number |
19J14599
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
三宅 太文 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | つまずき予防 / 歩行訓練ロボット / 動作予想 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの歩行時にリアルタイムに歩行相を検出し,つま先離床時に下肢関節角度情報から同周期の最小つま先高さ(以下,MTCと略す)を事前に予測することで,MTCに応じてワイヤ駆動型の歩行訓練ロボットを適応的に介入させる手法を確立した. まず,MTCの予測アルゴリズムにより,MTCが周期間の平均よりも低下するタイミングを事前に検出する手法を検証した.リアルタイムに計測・処理可能なゴニオメータを用い,股関節,膝関節,足関節角度を計測し,3関節角度空間上の平面特性によりつま先離床を検出した.角度を微分することで角速度と角加速度を導出することで,9種類の入力情報を取得し,ガウス関数の線形和である放射基底関数ネットワークによりMTCを回帰的に出力することで,MTC予測アルゴリズムを実現した.そして,8名の若者被験者に対し,トレッドミル上で歩行した条件において,予測アルゴリズムに基づく歩行訓練ロボットの適応的なアシストの効果を検証した.まず,5分間の歩行データを取得し,光学式モーションキャプチャーシステムにより取得したMTCデータを正解値としてMTC予測アルゴリズムを学習させた.そして,最小つま先高さの予測値が訓練データの平均よりも低い場合に歩行訓練ロボットがアシストを行う試行を2分間行った結果,アシスト前の2分間のデータと比較し,アシストを終えた後の2分間において,MTCの分布の最小値と第1四分位数が有意に増加した.一方で,MTCの最大値と第3四分位数は訓練後に有意に増加しなかった.以上より,MTCの下位の値を予測することで,ロボットにより外的にMTCの低下を妨げた結果,MTC低下を防ぐ制御性の高い歩行動作を人へ促すことができたと考えられる.予測に基づいた歩行訓練ロボットの適応的なアシストによって,実際につま先高さの制御性の高い動作へと誘発する歩行訓練効果を与えることが可能であることを示せた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,つまずき予防に向け,つま先高さの制御能力を向上させる歩行訓練ロボットの制御手法の構築である.本年度は,トレッドミル上の一定環境という制約をかけた上で,遊脚期中の最小つま先高さの低下を抑える手法を考案した. つま先制御能力の高い歩行動作を誘発するには,事前に最小つま先高さを予測し,予測結果に基づき適応的にロボットが介入する手法を構築する必要がある.本研究では,放射基底関数ネットワークを用いることで,下肢関節角度からリアルタイムに最小つま先高さを予測する手法を実現した.若年者と高齢者両方を含む実験の結果,提案アルゴリズムにより約2.3mmの誤差で高精度に最小つま先高さを予測可能であることを立証できた.そして,研究成果は,Applied Bionics and Biomechanicsに採択された. さらに,実際に予測アルゴリズムを歩行訓練ロボットに実装し,予測結果に基づき適応的にアシストを行う手法の妥当性を検証した.ロボットが適応的にアシストする2分間の歩行訓練後,最小つま先高さの下位の値が有意に増加する結果が得られた.以上,短期的に最小つま先高さの制御能力の高い歩行動作を誘発するための方法論を確立でき,期待通りの研究成果が得られた言える.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,環境を拡張するシステムを構築し,つまずきリスクが高まる微小な段差を想定した環境で本提案手法の適用を目指す.ヘッドマウントディスプレイを用いた拡張現実により,実際に訓練時につまずくリスクを低減した状態で,トレッドミル上に多様な立方体障害物環境を再現可能なシステムを構築する.人は,数歩先の障害物を視覚的に認識した上で,予測的に歩幅を調整し跨ぎ動作へと移行する.仮想的な障害物に対し,実物の障害物を跨ぐ際と同じ行動を人に促すために,実物の障害物と仮想的な障害物を跨ぐ際の関節動作と視線方向に最も相違がない表示位置を導出する.また,障害物高さ毎につま先が障害物に最接近する歩行周期の位相を導出し,人の障害物回避制御能力を向上可能なシステムの構築を目指す.
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