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2019 Fiscal Year Annual Research Report

Composition and Function of the Courts in Angevin Empire

Research Project

Project/Area Number 19J14631
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

田野崎 アンドレーア嵐  東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2019-04-25 – 2021-03-31
Keywordsアンジュー帝国 / 巡行宮廷 / 証書 / 随行員 / ヘンリー2世 / アリエノール・ダキテーヌ / ベレンガリア・オヴ・ナヴァール / クイーンシップ
Outline of Annual Research Achievements

前年度は、「アンジュー帝国」を統治したプランタジネット王家のうち、王以外の王族が発給・関与した395通の証書の収集と分析に専ら務めた。これらの証書から、伝達内容と受益者を確認した上で、発給地・発給時・証人のデータを抽出している。その後、叙述史料を参照し、各王族の宮廷の移動と随行員との関係を分析した。今までの分析で判明していることは、主に以下の2点である。
①リチャード1世妃ベレンガリアを除く全員に、個別のカンケラリウス(尚書≒印璽管理者)やカペッラヌス(礼拝堂付司祭:書記の役割を担いうる)の随行が見られた。これは、文書発給人員が未婚の王女を除く王族構成員にそれぞれ付随していることを示しており、王の尚書と王国の尚書部とが未分化であった状況に鑑みると、アンジュー帝国期のきわめて属人的な文書行政のありようを見て取ることできる。
②これらの随行員について、王族の宮廷間で移動・交換される例が複数見られた。親子間での人員の移動は、その後も移動先の宮廷に留まる場合がほとんどだが、王・王妃間では、摂政時などで一時的に王妃の宮廷に人員が移動する例が多い。更に人員の移動に加え、証書の書式についても王・王族の宮廷同士で共有されていることが、各証書の冒頭・末尾定式の変化がほぼ同時期であることから分かった。
以上が現状での分析結果である。更に前年度からは、このようなデータの分析に加え、人文学資料のためのマークアップ規格であるTEIを用いて、証書のテクスト自体をXML形式で入力・ラベリングしている。この作業により、各証書の内容・メタ情報を機械的に抽出できる状態にし、随行員の分布や関係性を容易に分析・出力可能にした。前年度の段階では、アリエノールの証書の全テクストのTEI化と随行員のネットワーク分析を試みて、2020年2月23日のTokyo Digital History Symposiumで発表した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

前年度は、2月下旬~3月中旬にかけてイングランドへ渡航する予定が、新型コロナウイルスの影響でキャンセルとなったことで、イングランドでの研究者(証書集成計画に携わるN. Vincent教授など)との意見交換や未刊行史料調査が叶わなかった。結果、アンジュー王家の構成員のうち、ベレンガリア、即位前のジョン、オットー・フォン・ブラウンシュヴァイクの証書の入手が完全にできていない状況にある。現状では直近の渡航は難しいことが予想されるため、Vincent教授等とオンラインでのやり取りで対応していく。
また、現時点で中間報告たる研究成果を論文の形で公表できていない。よって、ネットワーク分析を終えているアリエノールの宮廷随行員について、早急に投稿・発表する必要がある。

Strategy for Future Research Activity

今年度の主な作業は次の2つである。
①未刊行の証書の入手+入手できた各証書における、随行員のデータの更なる比較検討。手に入れた証書については、テクストのTEI化を終えた上で、各宮廷の交錯が最も激しくなる1173-1183年に主眼を置き宮廷間の行政・人員の分掌を検討していく。前年度の分析において、各王族の宮廷ごとに個別の文書発給人員が存在することは明らかとなったが、一方で証書の内容や随行員の性質から、統治行為が限定的と思われる王族(皇后マティルダ、小ヘンリーなど)も確認された。よって各宮廷の独立性については、証書の内容に加え、叙述史料・財務史料・印璽についても検討を加えた上で判断していく。
②アンジュー帝国における王妃の宮廷・地位についての検討。アンジュー帝国期の2人の王妃(アリエノールとベレンガリア)は、その活動や政治的地位において非常に対照的である。昨今の西洋中世におけるクイーンシップ(王妃・女王であることに付随する地位・属性・役割)の研究では、マザーフッド(母親たること)を欠いた王妃についての関心が高まっているが、ベレンガリアがまさにその例に該当する。よって今年度は、ベレンガリアの証書・書簡から、彼女の宮廷の構成や寡婦となった後の行動に着目し、アリエノールと異なる「子供のいない王妃」の地位や宮廷像を明らかにすることも目指す。

  • Research Products

    (2 results)

All 2020 2019

All Journal Article (1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 第三ラテラノ公会議(1179年)決議文翻訳2019

    • Author(s)
      藤崎衛監修、纓田宗紀、上遠野翔、佐野大起、柴田隆功、田野崎アンドレーア嵐、藤崎衛、望月澪、森本光、簗田航訳
    • Journal Title

      クリオ

      Volume: 33 Pages: 39-56

  • [Presentation] 証書研究におけるTEIマークアップの活用:イングランド王妃アリエノール・ダキテーヌの宮廷随行員の分析を事例に2020

    • Author(s)
      田野崎アンドレーア嵐
    • Organizer
      2020 Spring Tokyo Digital History Symposium

URL: 

Published: 2021-01-27  

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