2019 Fiscal Year Annual Research Report
低価数のクラスター塩を用いる室温付近での金属タングステン電析
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19J14672
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東野 昭太 京都大学, エネルギー科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | イオン液体 / 電析 / 分光法 / 錯体構造解析 / タングステン |
Outline of Annual Research Achievements |
2塩化タングステン W6Cl12 の合成を試み、得られた物質の結晶構造と水分濃度を、X線回折測定および赤外分光法により調べ、水分を含まない純粋な W6Cl12 が得られる熱処理条件を特定することができた。 予備的な検討の結果、5 価の塩化タングステン WCl5 も、イオン液体に高濃度溶解することを発見した。そのため 5 価塩化タングステンの合成および純度の評価も同時並行して行った。 W6Cl12 および5価塩化タングステン WCl5 を塩化アルミニウム系イオン液体に添加し、様々な条件で電気化学測定を行った。得られた電析物のタングステン含有率および結晶構造を分析し、タングステンの析出の可否を調べた。W6Cl12 および WCl5 のいずれを用いた場合もタングステン含有率の高い膜が得られたが、不純物として Al, O, Cl が含まれており、また XRD に明瞭な W のピークは見られなかった。このことから、純粋な W が得られたとの結論には至っていない。 電解浴の紫外可視・赤外・ラマン分光測定による錯体の構造解析を行った。タングステン錯体の分析には、大気との接触を防ぐための特別な実験装置が必要と思われたため、本年度は分析技術の習得に焦点を絞り、大気中でも比較的安定な鉄系電解液の錯体構造解析を行った。結果として、鉄アニオンとカチオンの構造の推定に成功し、電解液の粘度・電気伝導度を合理的に説明することができた。 以上の研究成果について、国際査読誌 1 篇、国際会議発表 1 報の発表を行った。また 4 月現在、さらに 1 篇の国際査読誌を投稿し査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2塩化タングステンW6Cl12の合成を試み、水分を含まない純粋なW6Cl12が得られる熱処理条件を特定することができた。またW6Cl12 を用いる電気化学測定についても結果が得られ始めている。今年度は、純粋な W が得られたとの結論には至らなかったが、W6Cl12 以外の、例えば WCl5 などの塩を用いた場合も良好な結果が得られている。 また分光法を用いる錯体構造の解析技術を習得し、鉄系電解液について、鉄アニオンとカチオンの構造を特定した。今後、同様の解析手法をタングステン電解液に適用することで、電解挙動と錯体構造を紐づけし、電解液の探査を加速できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
W6Cl12、WCl5 の電解挙動の調査を引き続き行う。W6Cl12 に関しては、合成の際に不純物を意図的に混入させることで、溶解度を高めることができることが分かっており、この点についてもより詳細な調査を行う。WCl5 に関しては、特定のカチオンと混合した際に室温状態で液体となることが判明している。この電解液の物理特性や電解挙動についても調査し、タングステンベースのイオン液体の応用可能性を探る。 今年度はタングステン電解液の錯体構造解析を試み、良好な電解挙動と、錯体構造との紐づけを行う。その上でより有望と思われる電解液に焦点絞って研究を進める。 電析物の評価手法として、X 線回折ではアモルファス状態であるという情報しか得られない。そのため今年度は、電析物の XPS 測定を行い、W が金属状態で存在しているかどうかを評価する予定である。 Cl などの不純物を低減するための手法として、添加剤の使用を検討する。エチレンジアミンなど、水溶液系で実績のある添加剤を足掛かりに、タングステン電析でも有効な添加剤を開拓していく。
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Research Products
(3 results)