2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J14680
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤沼 友貴 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | クラスター / 金属クラスター / 触媒 / 白金 / ナノ粒子 / 多核・クラスター錯体 / 合金 / サブナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、原子数個から十数個からなる金属クラスターの触媒機能開拓を目的として、錯体化学の手法を用いた新しいアプローチで白金合金クラスターの合成に取り組む。金属の種類とその構成原子数を精密に制御することで、単一元素では見られない電子状態や幾何構造の発現が期待できる。そこで、高活性・高選択性・高耐久性の触媒開発のための、合金クラスターの合成に挑戦する。本目標が達成できれば、バルクやナノオーダーでは進行が極めて困難な反応に応用可能な、革新的な触媒材料の実現が期待できる。 本報告者は、これまでの研究でティアラ型構造を有する環状白金チオラート多核錯体の5~12員環の合成・単離に成功し、単離した環状白金チオラート多核錯体を前駆体とした、原子数の制御された白金クラスターの合成を可能とした。異種金属を取りこむために、環状白金チオラート多核錯体の内部空間に着目し、異種金属ドープの、白金合金クラスターの合成に挑戦する。本年度は、当初の研究計画・方法に従い、環状白金チオラート多核錯体に包摂可能な金属の組み合わせを探索した。包摂金属の組み合わせ探索の結果、環状白金チオラート六核錯体に対して銅、銀イオンが内包出来ることが単結晶X線構造解析より明らかとなった。また、質量分析では、結晶構造の得られた6員環だけでなく、5員環や7員環でも包摂が示唆された。Pt-Cu、Pt-Agのイメタリック合金クラスターの精密合成が期待され、種々の組成の合金クラスター構築に向けて当初の研究計画通りに進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画・方法に従い、合金クラスターの精密合成に向けて、環状白金チオラート多核錯体のホスト・ゲスト機能探索と、それらを前駆体とした合金クラスター合成の検討を行った。 (1)AgPt6クラスターの合成:銀包摂白金六核錯体を前駆体とした、AgPt6クラスターの合成に成功した。走査透過型電子顕微鏡を用いた、クラスターの原子レベル観察を行い、銀1原子と白金6原子と思われる銀白金合金クラスターの観察に成功した。(2)異種金属包摂錯体をシリーズで合成・単離:AgPt6のほかにも、AgPt5、AgPt7、CuPt6の組み合わせからなる金属包摂錯体を単結晶X線構造解析や質量分析によって観測しており、組成を1原子精度で変化させた銀白金、銅白金クラスターの合成が期待できる。種々の組成の合金クラスター構築に向けて非常に良い結果が得られたと考えている。 (3)銀イオン包摂白金六核錯体の発光特性:当初の予定にはない成果として、銀イオン包摂白金六核錯体の室温りん光特性を見出した。銀イオンの包摂により、発光量子収率が飛躍的に向上した。従来のチオラート保護金クラスターの報告例よりも高い発光量子収率を示しており、発光材料としても期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、合成した白金及びその合金クラスターがどのような性質を持つのかを明らかとしていく。すでに電気化学測定を始めており、酸素還元反応と水素発生反応において核数依存性を見出している。この核数依存性の由来とクラスター特有の性質について考察を行っていく必要がある。極微小な金属クラスターは、検出感度や分解能の問題から、バルクやナノオーダーで用いられる既存の構造解析や計測が適用できない場合があるので、原子分解能の走査透過型電子顕微鏡のような新しい分析技術を積極的に利用していく。
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