2019 Fiscal Year Annual Research Report
イヌジステンパーウイルスの病原性解析と遺伝子治療への応用
Project/Area Number |
19J14751
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
南 昌平 山口大学, 大学院連合獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | イヌジステンパーウイルス / リバースジェネティクス / 感染性クローン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度、イヌジステンパーウイルス(CDV)のリバースジェネティクス系を用いた感染性クローンの作出を試みた。本実験の感染性クローンの元となるウイルスは、高知県で流行最初期に野生動物であるハクビシンから分離されたKochiO1A株を用いた。8種のウイルス蛋白をコードする遺伝子を哺乳類細胞発現ベクターであるpCAGGSベクターにクローニングした。また、KochiO1A株の全ゲノム配列をT7プロモーター、ハンマーヘッド型リボザイム、D型肝炎ウイルスリボザイムおよびT7ターミネーターを含むベクターにクローニングした。構築したプラスミドを全ウイルス蛋白と全ゲノム、構造蛋白のみと全ゲノム(pT7-CDV)、ribonucleoprotein complex(RNP)のみと全ゲノムの組み合わせでBHK/T7-9細胞へトランスフェクションし、培養上清を回収した。その後、培養上清をCDVの受容体であるsignaling lymphocytic activation molecule (SLAM)が恒常発現しているA72/cSLAM細胞へと接種した。本実験では、全ての組み合わせで、野生株を感染させた場合と同様に細胞融合を伴う細胞変性効果が観察された。 また、CDVのウイルス様粒子(VLP)の作出も試みた。CDVの8種のウイルス蛋白をコードしたプラスミド、または構造蛋白のみを293T細胞へとトランスフェクションし、培養上清を回収した。回収した上清から抗H蛋白抗体を用いた免疫沈降を行い、抗F蛋白抗体を用いたウエスタンブロットによって培養上清中のVLPを確認した。結果、上清中にVLPは検出されなかった。その他に、衰弱死した国内野生動物から新たにCDVの分離にも成功しており、分離ウイルスのCDV受容体結合蛋白であるH蛋白の塩基配列を決定した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リバースジェネティクス系を確立するにあたって必要なプラスミドは全てクローニングすることができた。リバースジェネティクス系の条件検討について試行を重ねたが、T7プロモーター、internal ribosome entry site(IRES)、T7ターミネーターを含むベクターへ緑色蛍光蛋白質(GFP)をコードする遺伝子をクローニング、T7ポリメラーゼが恒常発現しているBHK/T7-9細胞へトランスフェクションすることで、GFPの蛍光を観察できたため、細胞内T7ポリメラーゼ活性が示された。この細胞を用い、リバースジェネティクス法を実施した結果、感染性クローンが回収できた。 また、CDVのウイルス様粒子(VLP)の作出も試みたが、ウイルス蛋白のみの発現ではVLPが作出できないことがわかった。課題内容は順調に進展しており、次年度計画であるミニゲノム内包ウイルス作製のためのデータと試料は揃いつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
リバースジェネティクス法による感染性クローンの回収には成功したと考えられる。今後は感染性クローンの性状やプラスミドの組み合わせによる感染性クローンの回収効率の違い、感染性クローンへ遺伝子マーカーやレポーター遺伝子の導入など、作出したクローンの詳細な解析を行う。ウイルス様粒子が作出できなかったため、ミニゲノム内包ウイルスの作出を試みる。また、H蛋白のイヌ由来株と野生動物由来株の変異と病原性への関与を解明するために、今後も野生動物からのウイルス分離およびH蛋白の塩基配列解析を継続し、変異を感染性クローンへと導入、病原性を比較解析する予定である。
|