2019 Fiscal Year Annual Research Report
高分子メカノケミストリーにおける単一分子鎖系/バルク材料系間の相関解明
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19J14764
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
木田 淳平 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 高分子メカノケミストリー / メカノフォア / 高分子力学物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高分子メカノケミストリー分野での、a)「分子鎖一本を扱う系とバルク系でのメカノフォアの挙動との相関関係評価」とb)「メカノフォアの切断様式の違いが材料の力学物性に与える影響解明」を目的としている。現在、国内外で活発に研究が行われている高分子メカノケミストリー分野において、「メカノフォアの分子レベルでの特性」と「メカノフォアを導入した際の高分子の力学物性変化」の相関に関する知見は極めて乏しい。この相関を解明することは、メカノフォアを用いた材料の機能化法を産業的に応用する際に重要である。 2019年度は、主に目的a)に関する実験を行う予定としていた。まず量子化学計算を用いた理論計算により、実際に実験に用いるメカノフォアの設計を行った。計算によりメカノフォアとしての特性を発揮すると予測される分子骨格を数種類選定し、実際に合成を行った。ラジカル開裂開環型のメカノフォアである環状BiTEMPSや、金属触媒含有型のメカノフォアであるCuNHCなどの合成に成功した。合成したメカノフォアを直鎖高分子中に導入し、力や熱による反応性を調査した。それぞれのメカノフォアにおいて、その特殊な構造に基づく反応性が観測された。分子鎖一本を扱う、AFMによるナノフィッシングに関しては、実験の都合上今年度は行わず、代わりに目的b)の「メカノフォアの切断様式の違いが材料の力学物性に与える影響解明」の前倒し予備実験を行った。先で合成した環状BiTEMPSを架橋高分子中に導入し、引張試験による基礎的な力学物性の調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にて述べたとおり、2019年度に行う予定であった「AFMによる単分子鎖ナノフィッシング」の実験を次年度実施に変更した。その代わりに次年度に行う予定であった、「メカノフォア導入のバルク力学物性への影響調査」に関する実験を一部前倒しして行った。計画の一部変更は行ったが、2年間の研究計画を通して見た際に、半分程度の進捗は得られたと判断したため「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では高分子メカノケミストリー分野での、a)「分子鎖一本を扱う系とバルク系でのメカノフォアの挙動との相関関係評価」とb)「メカノフォアの切断様式の違いが材料の力学物性に与える影響解明」を目的としている。2019年度には、a)の一部およびb)の一部を達成した。2020年度は、まず目的a)で未達成であった、AFMによる単分子鎖ナノフィッシング法を用いて、メカノフォアを導入した高分子の分子鎖一本単位での物性測定を行う。続いて、2019年度に一部行った目的b)に関する実験を行う。具体的には、種々の特性を有するメカノフォアを架橋高分子の架橋点に導入した材料の力学物性に着目し、メカノフォア導入の影響を調査する。引張試験による基礎的な力学物性評価に加えて、引裂き試験やヒステリシス試験による破壊特性の評価や圧縮試験による力学的化学反応の進行の調査などを行い、メカノフォア導入の影響を多角的に評価する。
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