2019 Fiscal Year Annual Research Report
力学場から細胞活動へのフィードバックを考慮した組織形態形成の連続体力学モデリング
Project/Area Number |
19J14843
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹田 宏典 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / 形態形成 / 固体力学 / ロバストネス / 成長 / 細胞収縮 / エネルギー地形 / 有限要素解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,形態形成において,多様な形態が安定的に形成されるメカニズムを力学的な観点から理解することを目的とした.特に,組織の力学場に依存して細胞が活動を変化させるという,場の情報のフィードバックが形態形成の進行において果たす役割を探求している.本年度は,細胞の収縮や増殖などの活動から生じる組織変形の連続体力学に基づく数理モデルを構築し,計算機を援用して数理シミュレーションを行った.ここで,細胞活動にともない変化する組織のひずみエネルギーを解析し,エネルギー地形として可視化した.このエネルギー地形では,組織が潜在的に取りうる質的に異なる形態は,局所的なエネルギー安定状態の分岐として表現され,形態形成の過程はエネルギー地形上の軌跡として表される.また,形態形成過程の安定性は,エネルギー地形の形状から評価することができる.本研究では,エネルギー地形を手掛かりとして,形態形成を俯瞰的な視点から理解することを可能にする新たなアプローチを提案した. さらに,組織の力学場から細胞活動へのフィードバックを考慮した数理モデルの構築を試みた.脳組織の形態形成において,細胞の移動が組織変形に依存する現象に着目し,細胞移動と組織変形を表現するモデルを連成させた新たなモデルを構築した.これにより,組織変形に依存した細胞移動が形態形成に与える影響を解析することが可能になり,力学場から細胞活動へのフィードバックが脳組織の形態形成に与える影響を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画目標として,組織の力学場から細胞活動へのフィードバックが形態形成の進行に与える影響を明らかにすることを目指していた.細胞活動が組織の力学場に与える影響を明らかにするため,細胞の増殖と収縮から生じる組織変形の力学解析を行い,形態形成を力学的な観点から理解する新たなアプローチを提案した.また,組織の力学場に応じた細胞活動として,脳形態形成における組織変形に依存した細胞移動を表現する数理モデルを構築した.連成モデルの検証に際して,数値計算の不安定性の解消や実現象の再現に予定より時間を要したことで,その準備段階である本モデルの構築までの進捗となった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,本年度に構築した数理モデルを用いて,組織の力学場から細胞活動へのフィードバックが形態形成の進行に与える影響を明らかにする.まず,近似的な計算条件を設定し,脳形態形成を再現する数値シミュレーションを行う.ここで,脳形態形成において,細胞移動が寄与する層構造の形成をシミュレーションの対象とする.正常に形態形成が進行した場合と細胞移動を阻害した場合の数値実験を行い,脳形態形成における層形成のメカニズムを明らかにする.さらに,しわ形成などの大変形をともなう組織変形の解析へと発展させることにより,細胞移動が組織の変形に依存することが,脳組織の形態形成や内部の層構造の形成に与える影響を明らかにする.
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