2019 Fiscal Year Annual Research Report
TREM2上流制御因子によるアルツハイマー病の病態制御機構の解明
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19J15024
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
柳津 茂慧 明治薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / ミクログリア / TREM2 / 選択的スプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病は進行性の認知機能障害を呈する疾患で、認知症の中で最も頻度が高い。また、アルツハイマー病の発症や進行に関与する遺伝子が多数同定されており、TREM2もそのうちの一つである。一方、アルツハイマー病の病変形成や神経変性にミクログリアが関与することが報告されている。ミクログリアは多岐にわたる脳機能の発達や維持を支持する細胞で、ミクログリアの機能はTREM2の発現量によって変動することが示されている。さらに、アルツハイマー病の進行に伴ったミクログリアの極性変化が確認されており、これはTREM2の発現量上昇がキーイベントである。つまり、TREM2の発現制御に関わる分子は、ミクログリアの極性変化の詳細な過程を明らかにする可能性があり、アルツハイマー病の分子病態の解明に資することが考えられる。この研究課題のアプローチとして、我々が以前に報告している、TREM2の発現量が自身のexon 3の選択的スプライシングに依存的であるという知見に基づき、研究を行った。 選択的スプライシングはRNA結合タンパク質によって制御されている。そこで、当該年度は、TREM2 exon 3の選択的スプライシングを制御するRNA結合タンパク質の探索と同定を試みた。探索の結果、様々な分子がexon 3のスプライシングを変動させることが分かったが、その中から最も変動を大きくさせた分子を候補分子とした。この候補分子はTREM2の発現量にも変化を及ぼした。さらに、候補分子がexon 3の選択的スプライシングにどのように働きかけるかを明らかにするために、動物種間の応答性やキメラミニ遺伝子による配列応答性を検討した。 本研究課題で得られた知見は、TREM2によるミクログリアの機能変動やアルツハイマー病の発症や進行に新たな着想点を与えうる成果であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画はTREM2の発現を制御する分子の同定である。そのアプローチとしてTREM2 exon 3の選択的スプライシング制御分子に注目し、RNA結合タンパク質のスクリーニングを行い、制御分子を同定した。また、この制御分子が働きかける領域を明らかにした。さらに、TREM2 exon 3の選択的スプライシングには動物種間で違いがあることも明らかにした。 以上より、概ね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までにTREM2の発現を制御する候補分子を複数得ている。これらの候補分子の妥当性をさらに検討し、TREM2の発現を制御する分子によるミクログリアの包括的な機能制御機構やミクログリアの極性変化の分子メカニズムの解明に取り組む。そのために、モデルマウスや培養細胞を用いて、上流制御因子の同定を進める。培養細胞やレポーター遺伝子による一次スクリーニングを行い、候補因子を絞り込んだ後、アルツハイマー病モデルマウスにおける候補因子の役割等を検討することを考えている。
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Research Products
(1 results)