2019 Fiscal Year Annual Research Report
機能性膜タンパク質搭載細胞外ベシクルの設計とDDS応用
Project/Area Number |
19J15093
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石川 良賀 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 細胞外ベシクル / バキュロウイルス発現系 / PD-1 / ドラッグデリバリーシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、細胞外ベシクル(EV)の機能改変手法の確立、およびDDSキャリアとしての機能評価に重点を置いて研究を推進した。具体的な研究成果を以下に述べる。 申請者の先行研究において、高効率タンパク質発現系であるバキュロウイルス発現系を利用した、昆虫細胞が放出するEVへの膜タンパク質の新規修飾法ついて検討を行ってきた。しかし、標的とする膜タンパク質の提示量や機能保持について課題が残されていた。そこで、標的膜タンパク質であるPD-1の遺伝子設計に修正を加えた。具体的には、PD-1のシグナルペプチドを、バキュロウイルスのエンベロープタンパク質gp64由来のシグナルペプチドに置換した新たなPD-1遺伝子を設計し、遺伝子組換えバキュロウイルスを作製した。これを昆虫細胞に感染させると、シグナルペプチドを置換していないウイルスに感染させた場合と比較して、EV上へのPD-1の提示量が有意に増加していることが明らかとなった。さらにPD-1提示EV(PD-1 EV)のPD-L1リガンドとの結合能も上昇していることがELISAにより確認された。またPD-L1発現がん細胞であるHela細胞とPD-1 EVとの相互作用を共焦点レーザー顕微鏡により観察したところ、PD-1/PD-L1特異的に細胞内に取り込まれていることが分かった。 以上の研究成果により、膜タンパク質の遺伝子設計によりEV上への膜タンパク質の提示量および機能を向上できることが分かった。また、新たに作製したPD-1 EVはPD-1/PD-L1相互作用を介したがん細胞を標的とするDDSキャリアとして機能することが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度はバキュロウイルス発現系を用いたEV機能化手法の拡張化を図り、遺伝子設計によりEVへの膜タンパク質提示量および機能の向上について検討を進めた。この検討は当初は予定していなかったが、今後の生体内における医薬品デリバリーやがん治療効果を進めていくうえでも重要な知見であると判断したため、本検討を推し進めた。その結果、EV上へ提示されるPD-1の提示量および機能が向上し、がん細胞を標的とする新規DDSキャリアとしての有用性が示されることとなった。また当初の予定であった核酸医薬品であるsiRNAのデリバリー機能評価については、アニオン性リポソーム内へのsiRNAの封入およびEVとの融合により、siRNAを封入したPD-1ハイブリッドEVの作製の検討も進めており、最適な作製条件を明らかにしつつある点においても、順調に進展しているものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の展開として、作製したPD-1 EVに薬剤を導入し、がん細胞へのデリバリーおよびがん治療効果について主に検討していく。これまでの検討において、バキュロウイルス発現系で放出されるEV上に発現する膜融合性タンパク質gp64の機能を利用し、EVとリポソームを融合したハイブリッドEVが作製可能であることを見出している。本手法により、EV内に封入が困難であったバイオ医薬品(タンパク質、核酸など)をEV内に容易に導入できることが期待される。現在、GFPを標的とするsiRNAをリポソーム内に封入し、PD-1 EVと融合することでsiRNA封入PD-1ハイブリッドEVを作製しており、GFP発現Hela細胞へのsiRNAデリバリー機能およびノックダウン効率を評価する準備に取り掛かっている。GFPを用いた知見を基に、血管新生因子VEGFを標的とするsiRNAをがん細胞・組織へと送達することで、がん治療効果を検討していく。 また、PD-1ハイブリッドEVはPD-1抗体などに代表される「免疫チェックポイント阻害薬」と同様に、PD-1/PD-L1シグナルを介したT細胞抑制機構を阻害することができると考えられる。そこで、PD-1ハイブリッドEVを担がんマウスに尾静脈投与し、活性化T細胞をフローサイトメトリーにより定量し、PD-1ハイブリッドEVによる免疫応答の増強およびがん治療効果を検証していく。
|