2019 Fiscal Year Annual Research Report
母子の身体感覚の個人差が社会的認知発達に与える影響―授乳場面に着目して
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19J15173
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松永 倫子 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 母子相互作用 / 母乳授乳経験 / 内受容感覚 / オキシトシンホルモン / 情動 / 自律神経 / 心拍変動 / 社会的認知発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは,内受容感覚(自己身体内部の生理状態に関する感覚)と外受容感覚(外界の刺激)を統合して様々な認知処理を行う(Atzil et al., 2018). 養育者は乳児の表情や声を頼りに乳児の状態や情動を読み取り, 反応する. 乳児は日常的に養育者と身体を接触させながら相互作用する経験を蓄積する中で,内受容感覚を発達させるとともに,母親が表出する表情や声と言った外受容情報を統合させ, 自他の身体表象や心的機能を創発させていくとみられる. 本研究では,母乳授乳に関連する母と子双方の生理機能および内受容感覚の動的変動と,乳児の社会的認知発達との関連を明らかにする. 本年度の研究成果は以下の2点にまとめられる.(1) 授乳前後での母親のオキシトシンホルモンの変動の個人差が母親の表情認知に与える影響について検討した研究成果をBiology Lettersに投稿し, まもなく掲載予定である. 本研究の結果、母乳授乳の前後でオキシトシンホルモンがより高まった母親ほど, 成人顔のポジティブ表情の知覚に関する正確性が高く,また,ネガティブ表情の知覚に関する正確性が低いことが明らかになった.(2)母子双方の生理機能の変化と乳児の社会的認知発達との関連を調べる研究計画については見直しと変更を行った. 社会的相互作用中の母子の自律神経系機能を評価するため, 両者の心拍を同時に計測する手法・調査環境を確立した. また, 乳児の社会認知発達を評価する課題についても検討・作成し, 予備調査を含め25組分の3-5ヶ月時点(離乳食開始前)のデータを収集した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
母親の授乳経験とオキシトシンホルモンの個人差が母親の表情認知に与える影響に関する研究論文を執筆し, 生物学系国際誌Biology Lettersに投稿した. 本論文はまもなく掲載予定である. また. 母子双方の生理機能の変化と乳児の社会的認知発達との関連を調べる研究計画については見直しと変更を行った. 具体的には3-5ヶ月時点(離乳食開始前)に2回と9-12ヶ月時点(離乳食開始後)に1回の計3回にわたって縦断的にデータを計測することに変更した. 社会的相互作用中の母子の自律神経系機能を評価するため, 両者の心拍を同時に計測する手法・調査環境を確立した. 母子の心拍データについて, 時系列的変化を捉える解析手法についても, 共同研究者とともに検討を進めることができている. また, 乳児の社会認知発達を評価する課題についても検討・作成し, 予備調査を含め25組分の3-5ヶ月時点(離乳食開始前)のデータを収集した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和1年度に収集した母子の自律神経活動, オキシトシンホルモン, 質問紙データの解析を行う. また, 新規データの収集および9-12ヶ月時点(離乳食開始後)の縦断調査を継続し, 自律神経活動の発達や, 社会的認知発達との関連についての検討を進め, 論文化を目指す.
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