2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J15245
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡本 拓也 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | グラフェン / ディラック電子系 / 原子層材料 / 電子物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、2次元材料のグラフェンを3次元曲面化した際に、その3次元トポロジーとディラック電子が織りなす新規物性を探求する。3次元曲面グラフェンは、グラフェン膜が3次元ネットワーク状に張り巡らされた構造を有するため、Dirac fermionが2次元曲面に束縛されながら3次元空間を動き回るというユニークなトポロジーを有する。本研究は、3次元曲面グラフェンの新規物性を探求することを目的とした。 今年度はイオン液体による電気二重層を利用し、外部電場によってフェルミ準位を制御することで3次元曲面上のDirac fermionを実現した。この試料を低温(3K)下において、電子輸送計測を実施したところ、ゲート電圧に強く依存した負の磁気抵抗が得られた。特に、Dirac pointにおいては数テスラの強磁場下において、単なる量子補正効果ではない、巨大な負の磁気抵抗効果を示すことが明らかとなった。これは、従来のDirac fermionが有する反弱局在とは真逆の振る舞いであり、3次元トポロジーに由来する特異電子輸送特性であると考えられる。 この3次元トポロジーによる物理特性の変調を副次的に実証するため、ナノ空間分解光電子分光と赤外分光を用いて局所物性を計測した。得られた結果は、グラフェン膜が強く湾曲した部分において、局所的に電子系がsp3ライクに変調されており、加えて光励起による電子温度の上昇効果も変調されていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目標は、3次元曲面上でDirac fermionがどの様に振る舞うかを明らかにすることであった。実際に、3次元曲面Dirac電子系を量子効果が顕在化する極低温下で実現し、従来のグラフェンでは観測されていない特異な輸送特性を観測することに成功した。加えて、電子特性とリンクする化学結合特性、光・熱物性においても、3次元トポロジーが強く寄与していることを実験的に実証した。
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Strategy for Future Research Activity |
実験結果の解析・理論的解釈を中心に行う計画である。考慮すべき要素が多い複雑な系であるため、1つ1つ要素を押さえていきながら、実施していく。
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