2019 Fiscal Year Annual Research Report
ipRGC及び杆体応答量の違いがデバイス間の色の見えの違いに与える影響
Project/Area Number |
19J15530
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
鍵本 明里 横浜国立大学, 環境情報学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 色知覚 / メラノプシン / ipRGC / 杆体細胞 / 中心視 / 異種デバイス / ディスプレイ / 印刷物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、印刷物とディスプレイのような異なる表示デバイス間において、色の見えにずれが生じる原因を明らかにすることを目的としている。本年度は3つの実験を実施した。まず、色の見えのずれの原因が分光分布に起因したものか、自発光色と反射色の物理的なデバイスの違いに起因したものかを検証するための実験を行った。実験には、自発光色としてディスプレイを、反射色として色票を用いた。色票には任意の光を出力可能なマルチスペクトル光源を照射し、異なるデバイスであっても分光分布が同じ条件を3色(赤、白、ターコイズ)作成して色の見えを比較した。その結果、異種デバイスにおいても、分光分布が同じであれば色の見えが一致することを実証することができた。次に、実験参加者ごとにL, M, S錐体及び杆体細胞、ipRGCの分光視感度を簡易的に推定した。ここで得た視感度曲線をもとに、続く実験において各視細胞応答量を計算した。最後に、杆体細胞及びipRGC応答量の違いが色の見えに与える影響を明らかにするための実験を、ターコイズ色条件において検討した。その結果、L, M, S錐体応答量のみを揃えても色の見えが合わず、ipRGCや杆体細胞の応答量が異なると、色の見えに違いがあることが示された。このことから、L,M,Sの分光視感度の個人差だけではなく、メラノプシンや杆体細胞の色知覚への影響もデバイス間の色ずれ問題を起こす一要因となることが示された。また、基準光と比較した際の、ipRGCおよび杆体細胞が与える色の見えの変化の程度は、2名の実験参加者間で異なっているものの、変化の方向は同様の傾向が見られた。しかし、他の色条件についてはまだ十分な確認ができていないため、さらなる検討が必要であると考える。なお、得られた成果はVSS(国際視覚学会)および日本視覚学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験参加者ごとに分光視感度の推定を試み、ここで得た値を用いてさまざまな色条件についてipRGC及び杆体の影響を定量化する予定であったが、分光視感度の推定手法の見直しが必要となり、その対応に時間がかかっているため、やや進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
個人差の影響を少なくして杆体、ipRGCの色知覚への影響を確認する方法を確立し、さまざまな色条件について、杆体細胞およびipRGCの色知覚への影響を検討する。その後、L, M, S錐体、杆体、ipRGCの5視細胞を用いた色知覚モデルの構築を行う。
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