2019 Fiscal Year Annual Research Report
脳機能を支えるポリシアル酸修飾された神経細胞接着分子の構造と機能の解明
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19J15553
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森 愛理 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ポリシアル酸 / 糖鎖 / 精神疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は以下の2点の研究課題について、研究を実施した。 (1)ポリシアル酸構造の新たな制御機構の解明:免疫沈降を用いてポリシアル酸とX糖鎖の局在を調べたところ、ポリシアル酸鎖が存在するNCAMにはX糖鎖が存在しないことが明らかとなった。以上のことから、Xによるポリシアル酸鎖の制御を考え、細胞レベルの実験を行った。内在的にポリシアル酸が発現していないが、基質であるNCAMを発現しているマウス神経芽腫のN2a細胞に対して、ポリシアル酸転移酵素とXの生合成に重要な酵素Yを同時に遺伝子導入した。ポリシアル酸転移酵素のみを導入した場合は、ポリシアル酸の発現が起こるが、そこにYを同時に発現させると、本来起こるNCAM上のポリシアル酸修飾が起こらなかった。次に、ポリシアル酸転移酵素STXとPSTそれぞれについて同様の実験を行った。その結果、STXとPSTではYから受ける影響が異なることを明らかにした。以上のことから、Yとポリシアル酸酵素のタンパク質が互いに干渉する、あるいは基質のNCAMに対してYとポリシアル酸転移酵素間の競争が起きる可能性が示唆された。 (2)ポリシアル酸転移酵素が関与するポリシアル酸構造の制御機構の解明: STXとPSTが作るポリシアル酸構造の違いについて解析するために、分泌型polySia-NCAM-Fcを精製した。陰イオン交換クロマトグラフィ―で解析をしたところ、STXとPSTでは構造が異なる可能性が示唆された。また、STXとPSTを共発現する、あるいは統合失調症型STX(SNP-7)用いると、生合成されるポリシアル酸はPST単独発現型と同じになった。よって、STXとPSTが互いに強調しあってポリシアル酸構造を制御していることと、STX(SNP-7)が正常なポリシアル酸構造を生合成できずに、統合失調症の発症に関与しているかもしれないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は2項目の実験が計画され行われた。糖鎖Xが関わるポリシアル酸構造の新たな制御機構の解明に関しては、ポリシアル酸鎖が存在するNCAMには糖鎖Xが存在しないことが初めて明らかとなった。細胞を用いた実験ではポリシアル酸転移酵素のみを導入した場合は、ポリシアル酸の発現が起こるが、そこに糖鎖Xの生合成に関与する酵素Yを同時に発現させると、本来起こるNCAM上のポリシアル酸修飾がみられないことが確認された。またポリシアル酸転移酵素が関与するポリシアル酸構想の制御機構の解明については、従来の糖鎖付加部位以外にも新たな糖鎖付加部位が見つかり、そこにポリシアル酸が伸長する可能性が示唆される結果を得た。また研究内容は、国内および国際学会にて口頭発表およびポスター発表を行い、国際学会で奨励賞を授与された。以上の内容を踏まえ、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
糖鎖Xが関わるポリシアル酸構造の新たな制御機構の解明に関しては、糖鎖Xの生合成に重要な酵素Yのアミノ酸に変異を加えた変異体を作製し、その分泌型酵素を精製する。その後、すでに精製済みであるNCAMあるいはpolySTとの相互座用を分子間相互作用測定機器を用いて解析する。またポリシアル酸転移酵素が関与するポリシアル酸構想の制御機構の解明については、従来の糖鎖付加部位以外にも新たな糖鎖付加部位についての検証を行う。具体的には、その糖鎖付加部位にアミノ酸変異をもたらしたNCAMを作出し、そこにポリシアル酸転移酵素であるSTXとPSTをそれぞれ作用させて得たpolySia-NCAMの機能解析を行う。また、STXあるいはPSTが生合成したpolySia-NCAMの糖鎖を質量分析を用いて解析し、STXとPSTのそれぞれがもたらすポリシアル酸構造の違いを明らかにする予定である。
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