2019 Fiscal Year Annual Research Report
The influence of school enjoyment trajectory on absenteeism during the transition from primary school to junior high school
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19J15560
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
Hou Yuejiang 北海道大学, 教育学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 小中移行期 / 学校適応の変化軌跡 / 欠席志向性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の主な研究実績は3点である。1つ目は,小中移行期の学校生活の諸側面(友人・学業・教師)と学校享受感の変化軌跡との関連を検討した結果を論文としてまとめ,学術誌に投稿したことである。令和2年4月現在,審査(査読)が継続しているところである。 2つ目は,学校享受感の変化軌跡が実際の欠席行動に及ぼす影響について,統計モデリングを行った結果を論文化したことである(侯・太田・加藤,2019)。この研究の結果では,①欠席行動の生起メカニズムとしてゼロ過剰ポアソン分布の適合性がよく,また生起メカニズムの解釈と整合的であること,②小中移行期において欠席行動は2%から13%までの生徒に生じうると考えられ, 欠席行動を取りうる生徒は1週間に平均0.24日から1.75日まで欠席する傾向があることが示唆されたこと,③学校享受感の測定値そのものが低い子どもほど,また学年移行前後で学校享受感に大きな落差があった生徒ほど,欠席行動の生起リスクが高いこと,の3点が見出された。 3つ目は,欠席志向性尺度が作成された点である。従来,不登校や欠席行動の研究では,倫理的問題ゆえに定義上は不登校でない不適応状態にある生徒を“不登校予備軍”として仮定するアナログ研究の方法論が一般的であり,本研究も同様である。しかし,このスペクトラム仮説の妥当性は十分に検討されておらず,知見の一般化可能性は不明であった。そこで,項目反応理論に基づいて信頼性と妥当性の担保された欠席志向性尺度を作成し,その成果を日本心理学会第83回大会にて発表した(侯・原田,2019)。この成果は,①上記の仮説の妥当性を直接的に検討できるようになったこと(学術的意義),②欠席志向性が高く支援が必要な生徒を学校現場で容易にスクリーニングできるようになったこと(臨床的意義)の2つの意義があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに必要なデータ収集はおおむね終了している。そのため,本年度の研究計画は主にデータの分析,解釈,および研究成果の公表が中心となる。初等中等学校の生徒を対象とした教育心理学的研究の場合,遂行上の最も大きな不安定要素は学校関係者や児童生徒の協力を得た上でのデータ収集である。本研究はすでにこの段階を通過したため,順調であると評価できるものと考えられる。 一方で,“不登校”や“欠席行動”を扱う多くの先行研究と同様,倫理的問題ゆえに直接的に不登校生徒を対象とした研究はできない。本研究ではこれを回避するため欠席志向性スペクトラム仮説に基づいたアナログ研究からアプローチするが,本来の研究目的に対する検討に先立って,このスペクトラム仮説自体の妥当性を実証的に検討するための土台を構築する必要があった。そのため目的に対するデータ収集や分析作業と並行しながら,欠席志向性尺度の開発とその特徴の検討を行ったため,本研究の目的に対応する研究に著しい進捗が得られたとも評価できない。しかし,来年度中には研究成果の公表まで遂行できる見通しが得られている。そのため「おおむね順調に進展している」との評価が妥当であろうと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はこれまでに得られたデータを統合し,分析結果を基にした学会発表や論文の執筆作業を中心とする。具体的には以下のテーマについて実証的,理論的に検討を行う。 学校生活諸側面の充足度と学校享受感の変化パターンとの関連について,潜在プロフィルモデルを適用した分析によって,変化軌跡の個人差を反映する下位パターンの抽出を試みる。また,学校種を跨がない学年移行(例えば,小5から小6,中1から中2)と小中移行期の学校享受感の変化軌跡の比較を通し,小中移行期の特異性と意味を相対化し位置付けを明確にする。このことを通し“小中移行”という構成概念の再構成を試みる。 “学校バーンアウト”の概念構成や因子構造,またその妥当性を分析し,質問項目を精選し学校現場でも活用可能な心理尺度としてまとめる。 また,小中移行期の学校生活の諸側面,学校バーンアウト,欠席行動の有無および長期化の関連について,得られたデータを分析しモデルの構築を行う。具体的には小中移行期の学校生活の諸側面(友人・学業・教師)が学校バーンアウトをどの程度引き起こしうるか,その影響力について交互作用項を導入した一次線形モデルをもとに吟味する。また学校バーアンアウトが欠席行動(有無,日数)に及ぼす影響について一般化線形モデル(ゼロ過剰ポアソン回帰モデル)をもとに吟味する。またこれらの実証研究の成果に基づきモデルを構築し論文化する。
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Research Products
(4 results)