2019 Fiscal Year Annual Research Report
機能性分子を導入した多孔質ナノ孔結晶複合材料の応用研究
Project/Area Number |
19J15586
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
永井 杏奈 崇城大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | CD-MOF / シクロデキストリン |
Outline of Annual Research Achievements |
γ-シクロデキストリン系金属有機構造体(CD-MOF)は環境負荷の少ない多孔質材料で、規則的な繰り返し空間を有する結晶体である。CD-MOFは結晶内部に約1.7 nmの親水性ナノ孔と約1 nmの疎水性ナノ孔が交互に網目状に並んでおり、両親媒性ナノ結晶材料として機能する。これまでにCD-MOFの親水性ナノ孔に水溶性金属ポルフィリン、疎水性ナノ孔にフラーレンC60を導入した。本研究では、この2種のCD-MOFの触媒活性について評価した。 水溶性ポルフィリン(TCPP)にコバルト原子を導入したCo(Ⅱ)TCPPを合成し、CD-MOFの親水性ナノ孔に導入することで固定化触媒(Co(Ⅱ)TCPP/CD-MOF)を作製した。この触媒を用いた2ーメトキシ-4-メチルフェノールのカップリング反応を行い、その触媒活性、再利用について検討した。 一方、フラーレンC60は可視光を吸収することで励起一重項状態となり、系間交差により励起三重項状態となり、基底状態で三重項状態にある酸素分子へエネルギー移動により高い効率で一重項酸素が生成する。この一重項酸素の作用により癌細胞を消す光線力学的治療法が注目されている。C60は水に不溶であるために一般的にはアルコールや水酸基を化学結合して水溶化する手法が用いられているが、水溶液中の未修飾C60の一重項酸素発生能を評価した例はみられていない。本研究では光学的に透明なCD-MOF内に高密度でC60を導入し(C60/CD-MOF)、このCD-MOF内の孤立したC60による一重項酸素発生能について、可視光照射下におけるC60/CD-MOFによるフェノールの分解により評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Co(Ⅱ)TCPP/CD-MOFを固定化触媒とした2ーメトキシ-4-メチルフェノールのカップリング反応を行い、その触媒活性、再利用について検討した。反応率は24時間で約90%、収率は約80%とCo(Ⅱ)TCPPの均一触媒とほぼ変わらない結果となった。さらに、Co(Ⅱ)TCPP/CD-MOFの粒子径が大きいと反応物の拡散に時間がかかるため反応速度は低下するが、24時間後にはほぼ同じ値となった。触媒の再利用については、反応開始数時間の反応速度は低下するものの24時間後はほぼ同じ結果となった。しかし、収率は2回目以降1回目の半分以下となった為、CD-MOFに固定化されたCo(Ⅱ)TCPPの劣化が考えられる。 C60/CD-MOFを光触媒としたフェニルボロン酸のヒドロキシル化反応では、ナノ孔内に孤立したC60の一重項酸素発生能を調査した。C60/CD-MOFを触媒とし、アミンを含むフェニルボロン酸のクロロホルム溶液中で反応を行った。反応率、収率共に24時間で100%に達した。C60のクロロホルム溶液中で反応を行うと、約2時間で反応率100%であるため、CD-MOF内へのフェニルボロン酸の拡散速度が影響していると考えられる。また、使用するアミンの種類によって反応速度が変化することからCD-MOFへのアミンの拡散速度とCD-MOF内のC60への到達速度等が関係すると考えられる。CD-MOF 内で孤立したC60においても一重項酸素の発生が確認でき、この一重項酸素が光触媒反応を進行することを明らかにした。 このように、触媒を担持したCD-MOFの活性評価はこれまでに例がなく、カップリング触媒や可視光触媒として有用であるといった新たな知見を得た。さらに、CD-MOFに担持することで、固体触媒であるため、回収可能で再利用も容易であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにCD-MOFのカップリング触媒、可視光触媒の担体としての機能を明らかにした。CD-MOFの規則的な空間に触媒が担持されることで、固体状態で単分散させることが可能である。しかし、CD-MOFは水に溶解することから、これまでの触媒としての利用は有機溶媒中でのみ有効でした。CD-MOFを不溶化することが出来れば、応用の幅が広がると考えられる。そこで、CD-MOFの不溶化について検討を行う。 また、これまでCD-MOFへのゲスト分子の導入には、有機溶媒中でCD-MOFの表面から吸着させる吸着法やCD-MOFのメタノール蒸気拡散による結晶化と同時に分子導入を行う同時包接結晶化法を利用した。吸着法では任意の有機溶媒にゲスト分子が溶解すれば、CD-MOF内へ導入することが可能であるが、導入率が低いといった問題がある。また、同時包接結晶化法はゲスト分子の導入率が高いが、親水性分子しか導入することができない。このように、水や親水性溶媒に溶解しない疎水性分子の導入法は難しく、新規導入方法を開発する必要がある。本研究では、水に疎水性ゲスト分子を溶解するため、水と有機溶媒系の共溶媒を用い、メタノール蒸気拡散法を用いてゲスト分子を導入したCD-MOFを合成する。この方法が確立すれば、共溶媒を含むγ-CDのKOH溶液に親水性分子と疎水性分子を溶解させ、メタノール蒸気拡散法により親水性及び疎水性分子の同時導入が可能になり、分子内での反応や重合などに展開することができる。
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Research Products
(7 results)