2019 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive omics analysis and genome editing for early stage of secondary endosymbiosis
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19J15617
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
嶺井 隆平 長浜バイオ大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 藻類 / 植物化現象 / 細胞内共生 / 共生クロレラ / ミドリゾウリムシ / 次世代シーケンサー(NGS) / ゲノム / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、生態的・経済的に重要な多様な藻類を生み出してきた進化の原動力、植物化現象、そのきっかけとなった細胞内共生の遺伝子レベルでのメカニズム解明を目的とする。細胞内共生のモデル系として、実験室環境において非共生状態での単独培養・再共生手法が確立されている、共生クロレラ(Chlorella variabilis)とミドリゾウリムシ(Paramecium bursaria)との共生系を選択した。 初年度は、共生クロレラC. variabilis NC64A (ATCC50528)と、クロレラ属のタイプ種であり自由生活を営む非共生クロレラChlorella vulgaris NIES-686 (SAG 211-11b; CCAP 211/11b; UTEX 259)のドラフトゲノムをショートリード・ロングリード次世代シーケンサー(NGS)を併せて用いることにより高精細に構築した。それらのゲノム比較解析により、共生生活におけるゲノムの縮小という通説に反し、共生クロレラのゲノムは非共生クロレラよりも大きく、縮小傾向がみられない事が明らかになった。さらに共生クロレラ特異的に獲得/重複した遺伝子を抽出し、それらが実際に共生に関与しているかを確認する為に、共生時と非共生時のトランスクリプトームをRNA-seqにより取得した。その結果、光合成・代謝物の交換・細胞外構造に関わる遺伝子が共生クロレラで特異的に増加し、実際に共生時特異的に発現上昇している事が示された。これらの発見は、植物化現象につながる細胞内共生がどのように進化してきたかを遺伝子レベルで紐解いていく過程で先導的役割を果たす事が期待される。 さらに来年度に向けて、細胞内共生について多角的にアプローチする為、共生能欠損変異株および他の共生系という二つの異なる視点からの研究もスタートさせることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように、モデルとした共生クロレラC. variabilisのゲノムについては非共生クロレラC. vulgarisと比較解析を行うことにより、細胞内共生によるゲノム構造の変化および、C. variabilis特異的に増加した遺伝子を抽出することができた。さらに、共生時のトランスクリプトームを用いた機能解析により、それらが光合成・代謝物の交換・細胞外構造に関わる遺伝子である事を明らかにした。 来年度に向けた、共生能欠損変異株および他の共生系からの研究についても、重イオンビーム照射により共生能失った共生クロレラC. variabilis NC64A変異株のゲノム・トランスクリプトームを各種NGSにより取得し原因遺伝子の選抜をおこなった。また他の共生系については、C. variabilis同様にミドリゾウリムシに共生するMicractinium reisseri、およびその近縁非共生種Microactinium sp. CCAP 211/11F、太陽虫Acanthocystis turfaceaに共生するChlorella heriozoae、そして複数種の繊毛虫に共生するCarolibrandtia ciliaticolaのゲノム・トランスクリプトームを各種NGSにより取得し、これら4種の高精細なゲノムデータセットを構築を完了させた。 以上のように、植物化現象のきっかけとなった細胞内共生の遺伝子レベルでのメカニズム解明へのアプローチとして、網羅解析からのアプローチについては計画以上に進展しているが、C. variabilisのゲノム編集技術開発については、Cas9タンパク質とgRNA複合体をクロレラの細胞内へ導入する部分の条件検討中で、完了に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
共生能欠損C. variabilis変異株のゲノム・トランスクリプトームデータから抽出された遺伝子についてはより詳細な機能開始を行う。他の共生/非共生クロレラのゲノムデータは、比較解析をおこない植物化現象につながる細胞内共生がどのように進化してきたかを遺伝子レベルで明らかにしてゆく。進捗がやや遅れている、ゲノム編集からアプローチについても、進捗が計画以上に進んでいる網羅解析との研究リソースの配分調整することにより対応させ、網羅解析で得られた知見を逆遺伝学的にも示せる事を目指す。ただし、新型コロナウイルスによる影響も考慮し、バックアッププランとして共生クロレラの宿主ミドリゾウリムシ側からのゲノム・トランスクリプトーム解析を主軸としたアプローチについても検討する。
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