2019 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギーヘリウム照射によるプラズマ対向壁の内部損傷機構の解明
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19J15641
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Research Institution | Nagaoka National College of Technology |
Principal Investigator |
内田 雄大 長岡工業高等専門学校, 電気電子システム工学科, 助教
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | プラズマ・壁相互作用 / プラズマ対向材料 / 第一壁 / タングステン / ヘリウムイオンビーム / 照射損傷 / ブリスター / 電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代のエネルギー源として期待される磁場閉じ込め型核融合システムの炉壁候補材料について、高エネルギーイオン照射による内部損傷を実験的に評価している。2019年度においては、ブリスターの深さ分布計測と試料内部の温度上昇について検討した。 タンデム型静電加速器を用いて、多結晶タングステンの受け入れまま材に対して、4MeVのヘリウムイオンビームを照射した。照射実験後の試料をFIB(収束イオンビーム)装置、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)によりタングステンの深さ方向の断面の様子を観察し、試料表面からブリスターの亀裂の位置までの距離を膜厚として測定した。比較のために、4 MeVヘリウムのタングステンへの侵入深さを数値計算コードTRIMにより計算した。測定したブリスターの深さが、予想されたヘリウムの侵入深さよりも大きな値を示した。材料にイオンが入射するとはじき出しが発生し、材料の強度(降伏応力)は、はじき出し損傷(dpa)により変化する。そこで、dpaの深さ分布から降伏応力の深さ分布を見積もり、その結果、降伏応力は入射イオンの侵入深さで最大値を持ち、それより深い領域では減少することが分かった。このため、ブリスター生成の起点となる亀裂が侵入深さよりも深い領域で発生する可能性を示した。電子顕微鏡によりヘリウム照射箇所と未照射箇所の結晶粒径を測定し、照射箇所の粒径は未照射箇所よりも大きく、侵入深さ周辺で粒径の増加が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
静電加速器を用いたヘリウムイオンビーム照射実験を行い、試料内部の損傷を透過型電子顕微鏡と走査型電子顕微鏡を駆使して調査した。ヘリウムイオン照射箇所の結晶粒径は未照射箇所よりも大きいことを明らかにした。これは、イオン照射による材料内部での局所的なエネルギー付与のため試料温度が上昇し、再結晶化が発生し粒径が変化したと予想される。当初計画では、数値シミュレーションを行いこの仮説を検証する予定であったが、オーストラリア原子力科学技術機構での実験計画を今年度に実施することとなったため、次年度以降の実施課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘリウムイオンビーム照射による試料内部のヘリウム濃度分布を求めるための非定常数値解析コードを開発する。計算により得られたヘリウムの濃度分布と測定されたブリスターの深さとの関係を明らかにする。ヘリウムのエネルギー付与による試料内部の温度分布ヘリウムイオンのエネルギー損失から、内部の温度上昇と表面への熱拡散を計算する。また、研究成果を国内外における学会、研究会において報告し、学術雑誌に論文を投稿予定である。
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