2019 Fiscal Year Annual Research Report
試験管内再構成された環状DNA複製サイクルにおける転写翻訳反応の共役
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19J20097
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
奈良 聖亜 立教大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ゲノム複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、試験管内においてゲノム複製反応(RCR)と転写・翻訳反応(PURE system)を融合することで、自己複製システムの構築を目指している。RCRは、25種のタンパク質を用いて大腸菌ゲノム複製システムを再構成した系であり、複製開始起点oriCを含む環状DNAを指数関数的に増幅する反応である。自己複製システムは、RCRに必要な複製タンパク質を遺伝子として有するoriC環状DNA(自己複製ゲノム)を鋳型に、PURE systemを用いて複製タンパク質を発現させ、さらに、発現した複製タンパク質を用いて鋳型となったoriC環状DNAの増幅を導くことで達成される。 本年度では、まず、自己複製ゲノムの構築について検討を行った。自己複製ゲノムは、約50 kbの長鎖環状DNAであり、25種の遺伝子とoriCを集積して構築される。検討に過程において、自己複製ゲノム構築に必要となる、複数のDNA断片を集積し長鎖環状DNAを合成する手法の構築に至った。この手法は、ゲノム合成の分野で強力なツールとなることが期待される。この内容については、第42回分子生物学会年会でポスター発表を行った。また、実験医学4月号クローズアップ実験法にて、「大腸菌いらずのセルフリー長鎖DNAクローニング」として執筆した。次に、PURE systemを用いた複製タンパク質の発現について研究を進めた。これによって、RCRとPURE systemの融合に有用を考えられる大腸菌RNAポリメラーゼを用いた発現系の構築を達成した。これは大腸菌システムそのものを再構成するという点では必要な要素であり、モデル生物である大腸菌を見本に自己複製システムの構築を進めることが可能になる。この内容については、第14回日本ゲノム微生物学会年会でポスター発表を行ったとして、認定を受けた(コロナウイルス感染拡大防止のため年会中止)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、主に、(1)自己複製ゲノムの構築と(2)PURE systemを用いた複製タンパク質の発現について研究を行った。(1)については、25種の遺伝子をコードする自己複製ゲノムの構築に必要とされる長鎖DNA合成技術の開発を行った。この技術は、自己複製ゲノムの構築のみならず、今後、自己複製ゲノムの改変や編集を行う場合においても、汎用的に利用可能である。(2)については、PURE SystemがこれまでT7 RNAポリメラーゼを利用したタンパク質発現系であったが、大腸菌RNAポリメラーゼを利用した場合でもタンパク質発現を導くことが可能な条件を見出した。これは大腸菌システムを見本にしていく上では必要な要素であり、今後、複製・転写・翻訳の融合を行う過程で大きく貢献すると期待される。現在、課題となっている複製フォークと転写の衝突について、既に知見のある大腸菌における衝突を回避するシステムの導入するのには当に必要な条件である。 以上をまとめ、研究課題達成に向けて、基盤となる技術と反応条件を確立したと考え、概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り、RCRとPURE systemの共役系の構築を行う。ここでの共役系とは、ある複製タンパク質Xについて、遺伝子としてコードするoriC環状DNAが、RCR(Xを含まない)とPURE systemの混合液中において、タンパク質Xの発現に依存して増幅する反応系である。具体的には、まず、複製開始タンパク質DnaAについて、大腸菌RNAポリメラーゼで発現可能な遺伝子(dnaA)カセットを持つoriC環状DNAを構築し、これを用いた共役系の構築を目指す。この段階で、発現量の最適化や複製フォークと転写の衝突回避などの課題解決を大腸菌における知見を参考にしながら進める。次に、他の24種の複製タンパク質についても、DnaA同様の遺伝子カセットを合成し、共役系の構築を行う。最終的には、前年度で構築した長鎖環状DNA合成技術を用いて、25種全ての遺伝子カセットを1つのoriC環状DNAに集積し、自己複製ゲノムの構築を試みる。
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Research Products
(7 results)