2019 Fiscal Year Annual Research Report
座標変換と電磁気学の融合による光波帯大面積電磁クローク媒質の実現
Project/Area Number |
19J20104
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高野 佑磨 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 変換電磁気学 / 電磁クローク媒質 / 空間不連続境界 / メタマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
まず,本研究で取り扱っている変換電磁気学の理論の発展として,理論に双異方性媒質を導入し,他の媒質パラメータ同様の変換を受けることを示した.電気磁気効果の項を導入することによって,通常では実装が難しい透磁率などを間接的に制御するクロスタームの存在を期待していたが,電気磁気効果の項によって誘電率や透磁率を制御することには限界があることを明らかにした.また,新たな理論展開として,空間的に連続ではない境界(空間不連続境界)における電磁波の屈折現象について議論し,国際会議において発表した.通常,変換電磁気学における境界は空間的に連続に選ばれるため,界面における反射や屈折は生じない.しかし,空間不連続境界では,特異な反射や屈折現象が生じる.この現象について,マイクロ波領域における実験系を構築し,実験的検証に着手した.また,前記研究で発表した屈折現象に基づく平板レンチキュラーレンズを提案して国内学会で発表した.屈折現象の振る舞いを決める座標変換のパラメータや,座標変換領域の広さなどのパラメータを適切に設定することで,ある角度から入射した場合の電磁波の到達地点を制御することが可能である.さらに,この系を対称的に配置することによって,レンチキュラー動作が可能となる.この成果について,3Dプリンティング技術を用いた媒質の作製及び実験に着手した. 次に,光波帯における大面積電磁クローク媒質の実現に向けて,電磁クローク媒質の設計に取り掛かった.本年度導入した計算機を用い,可視領域電磁クローク媒質実現のためのプラズモニック系におけるナノ構造体の設計を,金属の可視領域におけるバルク応答を参考にし,その応答をナノ構造体に落とし込むことで進めている.また,次年度以降の試作実験に向けて,実験系の構築に着手した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変換電磁気学の理論に,新たな視点からの展開を2つ導入した.1つは双異方性媒質の導入であり,もう1つは空間不連続境界の導入である. 双異方性媒質の導入については,これまでの変換電磁気学の理論における他の媒質パラメータと同様の変換を受けることを明らかにした.一方で,電気磁気効果の導入によって期待していた透磁率などの間接的制御は,電気磁気効果によるクロスタームが存在しないため,限界があることを明らかにした.したがって,当初の目的である,実装困難な透磁率制御を電気磁気効果によって代替することは難しいことを示した. 次に,空間不連続境界の導入については,空間不連続境界を通ることで,電磁波の位相回転や波数ベクトルの回転が生じることを理論的に示した.これにより,空間不連続境界においては,特異な屈折現象や反射現象が生じることになる.そのような特異現象を利用したレンチキュラーデバイスを提案し,変換電磁気学を応用したデバイス設計に新たな視点を提供した. 実験的研究については,光波帯における大面積電磁クローク媒質の実現に向けて,電磁クローク媒質の設計に取り掛かった.可視領域電磁クローク媒質実現のためのプラズモニック系におけるナノ構造体の設計を,金属の可視領域におけるバルク応答を参考にし,その応答をナノ構造体に落とし込むことで進めた.また,次年度以降の試作実験に向けて,実験系の構築に着手した.
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Strategy for Future Research Activity |
変換電磁気学の理論に導入した空間不連続境界における特異な現象を利用したさらなるデバイスを提案する.当該年度で提案したレンチキュラー動作の他にも,平面レンズなどの設計も可能であると考えられ,空間不連続境界を用いた平面レンズの提案,実装,実験を推進する. 実験については,引き続きプラズモニック系におけるナノ構造体の設計を,金属の可視領域におけるバルク応答を参考にし,その応答をナノ構造体に落とし込むことで進めていく.設計が終了し次第,実際に作製および実験に進んでいく.また,設計と並行して,電磁クローク媒質応答検証のための実験系の構築にも引き続き取り組む.
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