2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J20134
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森田 遼平 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | フォトニック結晶レーザー / 短パルスレーザー / 半導体レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
パルス幅ピコ秒オーダーの短パルス・高ピーク出力なレーザーは、平均出力を抑えつつ瞬時的なパワー密度を高めることができるため、高分解能な遠隔光測距や、2光子吸収を用いた蛍光観察、金属材料などのレーザー微細加工など多岐にわたる技術へ応用されている。このレーザー光源を小型な半導体レーザー素子単体で実現できれば、装置の大幅な小型化・低コスト化が望める。ただし、従来の半導体レーザーにはビーム品質を保ったままでの高出力化に限界があるため困難であった。そこで、本研究では、2次元フォトニック結晶によりこの限界を克服したフォトニック結晶面発光レーザーにおいて、上記応用を可能とするパルス幅数十ピコ秒、ピーク出力100W級の短パルス・高ピーク出力動作の実現を目的としている。 本年度は、ピーク出力の向上に向けて、デバイスの発光面積を拡大すべく、フォトニック結晶共振器の構造、および、2次元可飽和吸収領域構造の最適化について検討した。両者の構造について、合わせて最適化を進めることで、昨年度の数倍の大きさの直径800μmの発光面積で短パルス動作が可能となり、その結果、昨年度のピーク出力数十Wを上回る、70W級の高ピーク出力・短パルス動作を実現した。また、上記の2次元可飽和吸収領域によるモード選択を可能とした高ピーク出力・短パルス動作可能なフォトニック結晶レーザーに関する論文が英学術誌Nature Photonicsに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、フォトニック結晶レーザーの短パルス動作のピーク出力の向上のため、デバイスの発光面積を拡大すべく、フォトニック結晶共振器の構造、および、2次元可飽和吸収領域構造の最適化について検討した。前者は、大面積で発振させるための工夫としてフォトニック結晶の格子をずらして配置した、二重格子フォトニック結晶構造である。この構造を深化させたものを、短パルスフォトニック結晶レーザーに導入することを検討し、高ピーク出力・短パルス動作に適した構造の探索および作製プロセスの確立を進めた。後者は、短パルス動作に必要となる可飽和吸収効果の増強と、動作の不安定化の要因となる高次モードの発振の抑制を同時に実現できる構造である。両者の構造について、合わせて最適化を進めることで、昨年度の数倍の大きさの直径800μmの発光面積で短パルス動作が可能となり、その結果、現時点で半導体レーザー単体から得られるピーク出力としては世界最高の、70W級の高ピーク出力・短パルス動作を実現した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ピーク出力の更なる向上、および、出射されるレーザー光の輝度の向上を狙うべく、1:発振面積の増大、2:利得吸収分布の最適化、の2つの軸を主な方針として研究を進める。具体的な方針としては、1:発振面積増大のために、フォトニック結晶層面内方向の回折および出射方向への回折の強さの調整を行い、短パルス動作に適したフォトニック結晶共振器構造を探索することで、その最適化を図る。その際に、より安定した単一モード動作を狙うため、フォトニック結晶層の面内に、屈折率分布や回折強度分布をもたせた構造についても検討する。2:利得吸収分布に関しては、利得の分布となる電流分布の調整や、短パルス動作に必要な可飽和吸収領域の配置の最適化によって、単一モード選択性の向上、および、ピーク出力の向上につながる可飽和吸収効果の増大を図る。また、上記の検討に加えて、活性層等の半導体積層構造の詳細な検討や、分散補償媒質によるパルス幅圧縮など、パルス幅の狭小化に関しても検討する。以上のように、フォトニック結晶レーザーデバイス全体の最適化を進めることで、更なる高ピーク出力・短パルス動作の実現を目指す。
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