2019 Fiscal Year Annual Research Report
チャームバリオン分光実験で探るダイクォーク相関の研究
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19J20135
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
赤石 貴也 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ダイクォーク相関 / ハドロン間の相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のハドロン物理学ではハドロン励起状態とハドロン間相互作用の理解が重要な研究テーマである。励起状態の理解にはハドロンを記述する有効自由度の解明が必要であり、J-PARC高運動量ビームラインにて計画しているチャームバリオン分光実験を通じて、有効自由度と考えられるダイクォーク相関を明らかにできる。 本研究員は、チャームバリオン分光実験において、ビームタイミング検出器の開発を行っていた。チェレンコフ輻射体であるPMMAをXの形に切り出し、磁場中でも動作し応答の早いMPPCで読み出すX型チェレンコフ検出器を考案した。検出器固有の時間分解能 (35.6 ± 0.9) psという結果を得ている。さらに、高計数率環境下における時間分解能は、1セグメントあたりの計数率をあげると時間分解能は悪化したが、HULモジュールにおいて(54.0 ± 0.80) psの時間分解能を達成した。これらの結果を研究会にてポスター発表を行った。現在、X型チェレンコフ検出器の研究開発における論文を執筆中である。 一方でハドロンの有効自由度としてハドロン分子状態があり、その性質の理解には構成するハドロン(メソンやバリオン)間の相互作用の理解が必要不可欠である。バリオン間の相互作用はストレンジネスを含む系の研究によって、核子間の相互作用をバリオン間相互作用として拡張して理解する試みがハイパー核の実験によって進んでいる。J-PARC K1.8BRビームラインでは、反K中間子を用いたメソン-バリオン系や、ストレンジクォークを含むハイパー核からのバリオン-バリオン系の相互作用の研究が行われている。本研究員は、メソン-バリオン系の研究として反K中間子重水素原子のX線分光実験の遂行と、バリオン-バリオン系の研究として三体系のハイパー核(ハイパートライトン: 3H)の寿命測定実験を推進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハイパートライトンの寿命測定実験のための準備を遂行した。主にこの実験の要の検出器であるPbF2カロリメータの性能評価を行った。想定する中性パイ中間子からの崩壊ガンマ線のエネルギーに対する特性を調べるため、PbF2カロリメータの陽電子に対する性能評価実験を東北大学電子光理学研究センターで行った。各セグメントのゲインを合わせた後、陽電子ビームのエネルギーを変えて照射し、エネルギー依存性を調べた。また、一つのセグメント内での位置依存性も測定した。エネルギー応答や分解能は照射したセグメントの周りのセグメントで漏れ出したエネルギーも足し合わせて評価した。この結果をもとにPbF2カロリメータをアップデートし、J-PARC K1.8BRビームラインに設置し、実験準備を完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
J-PARC K1.8BRビームラインにて行うハイパートライトン(3ΛH)の寿命測定実験のためのバッググランド測定実験を推進する。3ΛHと同じ生成反応である4ΛHを生成してバックグラウンドを評価する。4ΛHはバックグラウンドと信号を分離し易いため、3ΛHのバックグラウンドを見積もるための評価を容易に行ことができる。バックグラウンドがどの程度なのかを知ることが3ΛH寿命測定において必要不可欠である。実験後は共同研究者のもとへ赴き、速やかにデータを解析し、バックグラウンド量を詳細に調べる。さらに、3ΛH寿命測定実験の要であるPbF2カロリメータのさらに詳しい性能評価をするため、テスト実験を行い、3ΛH寿命測定実験を遂行するための準備を完了する。バックグラウンド量の評価とPBF2検出器の性能評価について学会等で報告を行う。 前年度に開発を行ったビームタイミング検出器について新開発の信号整形回路のテスト実験を行い改良の是非を判断する。改良の内容について投稿論文に発表する予定である。
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Research Products
(4 results)