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2019 Fiscal Year Annual Research Report

高温超伝導体原子層デバイスの創製とその応用

Research Project

Project/Area Number 19J20150
Research InstitutionOsaka University

Principal Investigator

鈴木 将太  大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)

Project Period (FY) 2019-04-25 – 2022-03-31
Keywordsスピントロニクス / 反強磁性体 / 銅酸化物高温超伝導体 / 原子層接合系
Outline of Annual Research Achievements

近年、三角格子を基調とした反強磁性体Mn3Snにおいて、磁気スピンホール効果という特異なスピンホール効果が報告されており、さらなる検証が望まれている。また、銅酸化物超伝導体は反強磁性体を母体とし、スピンの揺らぎが超伝導の発現に寄与していると予測されている。超伝導転移温度近傍でスピンホール効果を測定することで、スピンの揺らぎを定量的に評価し、高温超伝導発現機構の解明に寄与することが期待できる。本研究では、反強磁性的なスピン揺らぎを、スピン輸送測定により定量的に評価することを目的とした。研究対象は、銅酸化物高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+δ(Bi2212) と、反強磁性体Mn3Ni1-xCuxNとした。
Bi2212は層状の結晶構造を持ち、機械的に劈開することで薄膜にできるため、ナノ構造デバイスに適している。本研究ではBi2212をスピン輸送素子に組み込む手法の開発に取り組んだ。スピン輸送には、スピン拡散長の長いグラフェンを用いる。これをBi2212と組み合わせるため、原子層物質の接合系を作製する手法であるスタンプ法を開発した。スタンプ法の技術を学ぶため、実績のある物質・材料研究機構(NIMS)と共同研究を行った。スタンプ法を用いてBi2212/グラフェン接合素子を作製した。その後、電気伝導測定を行うことで、超伝導近接効果の可能性がある抵抗の減少を確認した。
Mn3NiNはM3Snと似た構造の反強磁性を示し、、弱い異常ホール効果を示す。さらに、一部のNi原子をCu原子で置換することで、反強磁性を保ちながら異常ホール効果が増強される。この結果はCu原子のドープにより磁気秩序が制御できることを示唆しており、Mn3Ni1-xCuxNは将来のスピン輸送素子の有力な候補となりうる。本研究ではMn3Ni0.5Cu0.5Nをスピン輸送素子に組み、逆スピンホール効果を観測した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究課題では、高温超伝導体の発現機構に寄与していると考えられているスピンゆらぎを、超伝導転移温度近傍で測定し、定量的に評価することを目標としている。そのために、高温超伝導体を用いた原子層デバイス作製技術を確立し、さらに作製した原子層デバイスをスピン輸送素子に組み込み、スピンゆらぎを観測することを目指して研究を遂行している。本年度は、高温超伝導体のスピン輸送素子作製を目指して、高温超伝導体Bi2212とスピン軌道相互作用の弱いグラフェンを接合させた素子を作製することに成功した。これは当初の予定通りで、さらにこのような素子を用いて、スピン輸送測定、さらにはアンドレーフ反射の実験を次年度以降行う予定である。
また、反強磁性体においてスピンゆらぎの及ぼす影響を調べるために、新たに三角格子反強磁性体Mn3Ni1-xCuxNにおけるスピン輸送測定を行った。その結果、ネール温度(TN = 240 K)以下でスピン流電流変換信号が観測され、さらに低温で信号が消失する様子を観測した。これは、明らかに磁気秩序状態がスピン流電流変換信号に影響を及ぼしている結果である。次年度以降はさらに詳細な測定を行い、スピン拡散長やスピン緩和時間について定量的に評価していく。
以上の成果から、「おおむね順調に進展している」と評価した。

Strategy for Future Research Activity

まず、作製したBi2212/グラフェン接合素子を用いて、アンドレーフ反射の観測を目指す。超伝導体/グラフェン界面では、鏡面アンドレーフ反射という特異なアンドレーフ反射が起きることが理論的に予測されている。鏡面アンドレーフ反射を高温超伝導体を用いて観測する。さらに、ゲート電圧を印加することにより、グラフェンのフェルミ面を変調し、アンドレーフ反射の変化を観測する。
次に、Bi2212/グラフェンを用いたスピン輸送素子を作製する。超伝導転移温度近傍でスピン輸送測定を行い、スピンゆらぎを定量的に評価する。さらに、ゲート電圧を印加することでBi2212の電界効果を観測する。一つのデバイスでキャリア密度を連続的に変化させることで、超伝導転移温度を変調し、超伝導を起こさない領域まで到達することが期待できる。従来、化学ドープで作製されていた超伝導相図より詳細な相図を作製することができる。これにより、高温超伝導の発現機構の解明に迫る。さらに、電界効果をスピン輸送素子に適用し、様々なドープ領域でスピン輸送測定を行う。
また、前年度、反強磁性体においてスピンゆらぎの及ぼす影響を調べるため、新たに三角格子反強磁性体Mn3Ni1-xCuxNにおけるスピン輸送測定を行った。磁気秩序状態がスピン流電流変換信号に影響を及ぼしていることは確認したため、詳細な温度依存性を測定し、スピン拡散長やスピン緩和時間を定量的に評価する。

  • Research Products

    (3 results)

All 2020 2019

All Presentation (3 results)

  • [Presentation] Spin transport measurement in noncollinear antiferromagnet Mn3Ni1-xCuxN2020

    • Author(s)
      S. Suzuki, T. Hajiri, R. Miki, H. Asano, K. Zhao, P. Gegenwart, K. Kobayashi and Y. Niimi
    • Organizer
      New Perspective in Spin Conversion Science (NPSCS2020)
  • [Presentation] 反強磁性体Mn3(Ni1-xCux)Nにおけるスピン輸送測定2020

    • Author(s)
      鈴木将太, 羽尻哲也, 三木竜太, 浅野秀文, Kan Zhao, Philipp Gegenwart, 小林研介, 新見康洋
    • Organizer
      日本物理学会第75回年次大会
  • [Presentation] 高温超伝導体Bi2212/グラフェン接合素子の作製2019

    • Author(s)
      鈴木将太, 岩崎拓哉, 森山悟士, 中払周, 若山裕, 宮坂茂樹, 田島節子, 小林研介, 新見康洋
    • Organizer
      日本物理学会 2019年秋季大会

URL: 

Published: 2021-01-27  

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