2019 Fiscal Year Annual Research Report
個人情報保護と推定精度のトレードオフ関係及びそれに関連した量子効果の数学的解析
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19J20161
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉田 裕哉 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 最適化 / 量子状態 / 差分プライバシー / 漸近的decoupling / mixing / 一般確率論 / 状態識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
全てを正確に記すのは難しいので, 適宜簡略化して記載する. 2019年度は主に次の3つを調べた: (1)古典的データXを別の古典的データに変換する場合のトレードオフ関係最適化, (2)古典的データXを量子状態に変換する場合のトレードオフ関係最適化, (3)漸近的decouplingと混合性 (mixing) の関係. 項目(1)については既に多くの先行研究がある. 特に個人情報保護の指標が差分プライバシーの場合, Kairouzらの2016年の論文が重要で, 理論的に可能な最適化は全てそこに載っていると言ってもよい. 私は2018年度に行った研究の拡張として, Xが2値で個人情報保護の指標が差分プライバシーの場合に最適化を行ったが, 全く同じ結果がKairouzらの2016年の論文にあったため, 公開できなかった. 一方, 項目(2)は全く研究されていない. 私はXが2値で個人情報保護の指標が差分プライバシーの場合に最適化を行った. この場合, 古典状態で最適化できるので量子状態を用いる意味がないことが判明した. また, 推定すべき有用な性質を明らかにするために漸近的decouplingを調べた. 私は2018年度に得た結果を大幅に発展させ, 漸近的decouplingが局所混合 (local mixing) と同値であることを示した. これにより, 漸近的decouplingは計算で判定可能であることと, 理論的枠組である一般確率論 (GPTs) に依存しないことが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目(2)の結果は査読付き国際会議に受理され, 項目(3)の結果は論文誌に受理された (研究費の使用年度の関係上, 項目(3)の形式的な受理の日付は4月以降). 他にも, 状態識別に関する結果が論文誌に掲載されるなど, 研究は順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
項目(2)について, 2019年度の研究ではXが2値の場合しか調べておらず, 今後はXが3値以上の場合を調べる必要がある. 私はXが3値以上なら量子効果があると予想しているため, それを明らかにしたい. 項目(1)と(2)は本研究において基本的な設定であるが, できることはあまり残っていない. そのため, 今後は項目(1)や(2)とは別の設定におけるトレードオフ関係も調べる予定である.
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