2020 Fiscal Year Annual Research Report
大気圧プラズマを用いた硬脆難加工材料のナノ製造プロセスの開発
Project/Area Number |
19J20167
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
SUN RONGYAN 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | プラズマ援用研磨法(PAP) / ビトリファイド砥石 / ドレスフリー研磨法 |
Outline of Annual Research Achievements |
難加工材料の最終仕上げ方法としてスラリーと呼ばれるアルカリ等の薬液と砥粒を含む懸濁液を用いたCMPプロセスが用いられているが、スラリー研磨では、材料の表面欠陥がアルカリ成分によって浸食されて形成されるエッチピットのために表面粗さが悪化する、凝集による砥粒の粗大化によりスクラッチが形成される、スラリーの購入および廃棄する際の処理コストが大きい等、非常に多数の問題点を有している。スラリーの代わりに固定砥粒(砥石)を用いたドライ研磨法では、以上の問題を解決できるが、研磨中に砥粒の摩耗により起こった「目つぶれ」や、砥粒の間に切りくずや砥石の破片などが詰まることにより起こった「目詰まり」などの問題が研磨速度低下の原因となる。ドレッシングによって砥粒の突き出しを再び確保することで、砥石の切れ味を取り戻せるが、ドレッシングは加工能率の低下とコストの上昇に繋がる。当方の先行研究では、PAP法を用いて原子レベル平滑なSiC、GaN表面を得られたが、局所大気圧プラズマとレジンボンド砥石を使用したので、プラズマ改質効率低下やレジンボンド砥石の摩耗等の問題点がPAP加工レート低下の要因となっている。これらの問題を解決するため、私はビトリファイドボンド砥石とCF4を含有するプラズマを用いたドレスフリードライ研磨法を提案した。CF4含有プラズマを用いたPAPの場合には、ドレッシングを実施しなかったが、砥石のボンド材主成分であるシリカがCF4の分解により生成されたフッ素ラジカルによりエッチングされ、リアルタイムにドレッシング作用が生じたためにドレスフリーな研磨プロセスが実現できた。また、CF4含有プラズマの照射によりAlN基板の表面に除去されやすいAlF3軟質層が形成されたので、プラズマ援用ドレッシングとプラズマ改質の相乗効果により、通常のドライ研磨法の3倍除去レートを得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度において、ドライ研磨法において高研磨レートを維持するため、砥石のドレッシングの必要性を検証した。3時間のドレッシング無しドライ研磨実験と、30分ごとにドレッシングした3時間のドライ研磨実験を行った。ドレッシング無しのドライ研磨の場合には、砥石の「目つぶれ」、「目詰まり」が生じたため、研磨レートが遅く、接触式輪郭形状測定機(Surfcom 1400D)で研磨痕の断面を測定して得られた除去深さは500 nmしかなかった。30分ごとにドレッシングを行なった場合には、砥粒の突き出しの確保により高い研磨レートが維持されたため、AlNの除去深さは750 nmだった。CF4含有プラズマを用いたPAPの場合には、ドレッシングを実施しなかったが、砥石のボンド材主成分であるシリカがCF4の分解により生成されたフッ素ラジカルによりエッチングされ、リアルタイムにドレッシング作用が生じたためにドレスフリーな研磨プロセスが実現できた。また、CF4含有プラズマの照射によりAlN基板の表面に除去されやすいAlF3軟質層が形成されたので、プラズマ援用ドレッシングとプラズマ改質の相乗効果により、より高い研磨レートが得られ、AlNの除去深さとして1000 nmを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 室温でPCVMによるRS-SiCの形状修正加工を行う際に、反応生成物が基板上に堆積することでその後の反応が抑制され、エッチングレートが低下する。今年度に、基板を加熱してPCVM加工を行い、反応生成物の堆積を抑制できるかどうかを確認する。加熱条件で、RS-SiCのSiC成分とSi成分のエッチングレートが等しくなる条件を探索し、PCVM 法を用いた金型用反応焼結SiC(RS-SiC)材の形状創成において形状精度0.01 μmを達成する。 (2) RS-SiCのSiC成分とSi成分の酸化レートが等しくなる条件の探索。プラズマ発光強度スペクトル測定により、反応ガス組成と生成された反応ラジカル種の相関を調査するとともに、異なる反応ラジカル種で形成した改質層の組成と構造をXPSならびにXTEMを用いて観察する。これにより、SiC成分とSi成分の酸化レートが等しくなる反応ガス組成を探索する。 (3) RS-SiCに対するPAP加工速度の向上。砥石とプラズマ発生領域の面積比が異なる加工ヘッドを作製し、砥粒の材質、投入電力、荷重、等のパラメータに関して、改質膜が残存せず、かつ砥石の消耗も抑制できる最適条件を探索する。 (4) CF4含有Arプラズマを用いたプラズマ援用研磨による、脱粒ピット無しのスムーズなAlN表面が得られた。今年度に、 PAPのメカニズムを解明し、AlNセラミックス基板へPAPの全面加工を実現する。
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