2020 Fiscal Year Annual Research Report
膜貫通ペプチドを用いた糖脂質との静電的相互作用解析
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19J20171
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
二村 友香 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ガングリオシド / スフィンゴ糖脂質 / 脂質-タンパク質相互作用 / イメージング / 相分離リポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
膜貫通タンパク質の一種であるインスリン受容体は血糖値降下シグナルの伝達に関与し、その感受性の低下は糖尿病を引き起こす原因となる。2型糖尿病では、糖脂質の一種であるGM3が細胞膜上に集積し、自身の負電荷とインスリン受容体の正電荷による静電的相互作用によってその働きを阻害すると考えられているが、細胞膜の複雑性から詳細な解析は行われていなかった。 詳細な解析が可能なモデル系を構築するため、令和2年度は蛍光標識したインスリン受容体の膜貫通ペプチドの合成を行った。今年度はこのペプチドを2種類のリポソームに組み込むことで、実際にGM3との相互作用を解析した。 はじめに相分離リポソームを用いた解析を行った。令和2年度において、合成したペプチドが相分離リポソームのLd相に局在することは確認した。今年度は相分離リポソーム中にGM3が含まれると、合成ペプチドがLd相からLo相へ若干移行することを確認した。この現象はGM3の生合成前駆体であり、電荷を持たないラクトシルセラミドにおいては確認できなかった。 次に多重層リポソームに組み込まれた合成ペプチドの会合に伴う自己消光の測定を行った。その結果、GM3存在下では自己消光の解消が見られたのに対し、ラクトシルセラミドの場合にはこのような効果は見られなかった。このことから、GM3はペプチドと相互作用することでペプチドの会合を阻害することが分かった。 以上の結果からインスリン受容体の膜貫通部位とGM3が直接相互作用することが示された。さらに、相互作用の要因がGM3のシアル酸残基と膜貫通部位周辺の塩基性アミノ酸との静電的相互作用であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度合成したインスリン受容体の膜貫通ペプチドをリポソームに組み込み、当初の計画通り2種類の方法で相互作用解析をすることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はモデルペプチドを用いて、膜貫通タンパク質と脂質の静電的相互作用について更なる解析を行う。モデルペプチドは電荷を持つものと持たないものの2種類を合成し、静電的相互作用の存在をより詳細に解析する。モデルペプチドと脂質の相互作用は、令和3年度に構築した相分離リポソーム中でのペプチドの局在解析およびペプチドの会合に伴う自己消光の解析などにより多角的に検討を行う。
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