2019 Fiscal Year Annual Research Report
前周期遷移金属のσ結合メタセシス反応による触媒的炭素―水素結合官能基化反応の開発
Project/Area Number |
19J20196
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 まりこ 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 炭素-水素結合活性化 / 前周期遷移金属錯体 / ハーフチタノセン |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請者は、前周期遷移金属錯体の炭素-水素結合活性化反応に対する高い反応性に着目し、研究を行っている。昨年度は、所属している研究室独自の研究課題である、「カチオン性ベンジルハフニウム錯体触媒によるピリジン誘導体のアルキル化反応」に関連し、類似の配位子骨格を有するカチオン性ベンジルハフニウム二核錯体を単離、結晶構造解析により配位子上のベンジル基が中心金属にη6-配位していることを明らかにした。また、その反応性についても検討し、ピリジンやホスフィン配位子、アルキンを加えることで中心金属にη6-配位しているベンジル基が解離することを示した。これはカチオン性ベンジルハフニウム錯体による触媒反応における活性種の挙動を示唆する成果であり、学会発表および学術論文にて報告済みである[Organometallics 2020, 39, 614-622]。 さらに私は、「ハーフチタノセン錯体を触媒としたオレフィンのヒドロアミノアルキル化反応」についても研究を行っている。本研究課題の反応機構解析のためにETH ZurichのCoperet教授との共同研究を立案し、スイス政府主催の留学支援プログラムYoung Researchers’ Exchange Program between Japan and Switzerland 2019に採用された。これを受け、Coperet教授の研究室に2019年9月から半年間滞在し、実験および理論計算の両面から反応機構に関する研究を行った。本共同研究は現在も継続中であり、学術論文への投稿を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、以前から取り組んでいたカチオン性ベンジルハフニウム二核錯体の合成およびその同定、またその反応性に関する研究成果を学術論文として報告することを達成した。また、並行して行っている研究課題「ハーフチタノセン錯体を触媒としたオレフィンのヒドロアミノアルキル化反応」についても大きな進展があった。スイスのETH ZurichのCoperet教授と共同研究を行うことで、DFT計算や固体NMRといった新しい切り口から反応機構解析に取り組むことができた。具体的には、実際にCoperet教授の研究室に半年間滞在し、反応機構に関する実験や理論計算を行い、現地の学生やポスドク、Coperet教授とのディスカッションを行った。異分野の研究者とのディスカッションの中で、触媒活性種は本申請者が予想していたものと異なるのではないか、との意見を得、その後、サンプルを調整し、測定を行うことで真の活性種の観測に成功した。この結果により、反応機構に関する研究が大幅に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
「ハーフチタノセン錯体を触媒としたオレフィンのヒドロアミノアルキル化反応」の研究課題について、反応機構解析をさらに進め、基質適用範囲の検討を行う。そして、今年度中での学術論文への投稿および学会による発表をすることを計画している。 また、現在はアニリン類縁体に限定されている基質適用範囲の拡大を企図し、より高活性な触媒系の探索を並行して行う予定である。具体的には、共同研究先である固体NMR測定結果を用いたDFT計算に詳しいスイスのCoperet教授と密に連絡を取り、錯体の固体NMR測定およびDFT計算によるシミレーションにより錯体の触媒活性を評価することで、より優れた触媒系の予想を行い、実験によりそれを裏付ける計画である。
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Research Products
(5 results)