2020 Fiscal Year Annual Research Report
内部構造制御による両面ナノペーパー配線基板の実現に向けた機能性発現
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19J20241
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
春日 貴章 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | セルロースナノファイバー / 電気泳動堆積 / 短絡抑制技術 / イオンマイグレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は多層ナノペーパー配線基板の信頼性向上に向け、(1)ナノペーパーコーティングによる水濡れ時の信頼性評価を中心に行い、(2)ナノペーパーコーティングによる水濡れ時の短絡抑制メカニズムを明らかにした。加えて、得られた知見を基に(3)新規回路保護技術としての用途提案を行った。(1): 電子回路が水濡れした際の故障形態は、金属配線・電極への水分の付着、正極金属の電離、負極への金属イオンの移動、負極からの樹状析出による電極間の短絡の4段階を経て引き起こされる。しかし、カルボキシ基導入量1.0 mmol/g以上のセルロースナノファイバーでコーティングされた銅電極に関しては、電極への水分の付着、正極金属の電離は避けられないものの、水没24時間経過後も電極間が短絡しないことが明らかとなった。(2): 短絡抑制時の電極周囲の状況を様々な角度から観察、評価することで、短絡抑制メカニズムを追跡した。その結果、カルボキシ基導入量が十分に多い(例: 1.8 mmol/g)セルロースナノファイバーで構成されるナノペーパーは、水濡れ時に吸水・再分散するだけでなく、電極間の電場により電気泳動し、陽極周囲で堆積・ゲル化していることが明らかとなった。セルロースナノファイバーの電気泳動/ゲル化により、陽極から溶出した銅イオンが陰極へと到達できないため、水濡れした状態で24時間以上という長時間にわたって短絡が抑制できたと考えられる。(3): 今回発見された短絡抑制効果は、電極上で再分散したセルロースナノファイバーが陽極周囲に電気泳動し、ゲル化することで発揮されるため、コーティングが損傷していても短絡抑制が可能である。既存の防水封止材と積層することで従来通りの防水性能と封止が損傷するような過酷な環境における安全性を両立できるほか、紙の良さである生分解性を損なわない電子回路信頼性向上技術として期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画に沿って、ナノペーパーコーティングを施した電子回路の水濡れ時の信頼性評価を中心に行い、予想を上回る短絡抑制効果を発現することに成功した。また、ナノペーパーを構成するセルロースナノファイバーが水濡れによって再分散し、電極間の電場によって電気泳動・ゲル化するというユニーク且つ応用性に富んだメカニズムを解明する等、研究に関しては当初の計画以上に進んでいる。しかし、社会情勢の関係で一部実験や学会発表などの研究活動に支障が生じたため、総合的には計画通りの進捗状況に落ち着いている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでに開拓したナノペーパー基板の多層化やセルロースナノファイバーの電気泳動堆積といった技術・知見をさらに発展させ、「紙」ならではの特性を活かした多層・立体ペーパーデバイスの実現に向けた基盤研究に取り組む。
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