2020 Fiscal Year Annual Research Report
柔軟なポリイミン配位子を用いた銀サブナノクラスターの精密合成法の開発
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19J20289
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 結大 北海道大学, 大学院環境科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | クラスター / ポリマー / フィルム / 分子吸着 / 固体触媒 / 自己集合 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに二座のアルキルチオラートで保護されたAu25(SR)18クラスターが構造を保持したままポリマー化することを見出したが、本年度はそれに続いてAu25クラスターポリマーの固体触媒への応用や分子吸着特性について多くの興味深い結果を得ることができた。Au25(SR)18クラスターは多様な触媒能を示すことが知られているが、そのほとんどが均一系での反応である。研究代表者らが本研究で合成したAu25クラスターからなるポリマーは、不均一系での一重項酸素発生の触媒として機能することを見出した。本ポリマーは不溶性なので遠心分離によって容易に再利用可能であり、リサイクル利用してもその活性は大きく変化しなかった。このようにクラスターとしての性質を保持している一方で、細孔性ポリマーとしての性質も保有していることも明らかになっている。Au25ポリマーを種々の色素分子の溶液に浸透すると、ポリマー内部に分子が吸着する様子が確かめられた。また、固体透過吸収スペクトルではAu25クラスターのピークと吸着された色素分子のピークの両方が確認され、吸着後もAu25クラスターの構造は保持されていることを確かめた。さらに興味深いことに、リン配位子で保護されたAu6クラスターの吸着も行えることがわかった。複数種のクラスターを混合するとクラスター間で反応するケースも見られるが、本結果はホスト骨格とゲスト分子の両方に金クラスターを利用した革新的な結果である。 その他、Au25クラスターがチオールの酸化触媒として働くことを発見し、両親媒性配位子の導入によるAu25クラスターの紐状集合体を構築することにも成功した。また、対アニオンの効果により誘起されるカチオン性Au6クラスターの特異的な自己集合を確認するなど、クラスターの集合体の化学を開拓する多くの結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
二座チオラートを用いたクラスター合成を発展させたことで、当初の計画では予想もしていなかったような構造保持的なクラスターのポリマー化や、それに続く分子吸着・固体触媒への応用などが次々と見出されている。また、部分的にフッ素化された両親媒性配位子の導入によるAu25クラスターの紐状への組織化や、対アニオンに注目したAu8クラスターの組織化とそれに伴う発光増大などを達成している。本研究の一連の結果は、単一の分子としての扱いが主流だった分子性クラスターを、集合体やポリマー・固体材料への応用に発展させる上で重要な位置付けになると考えられる。よって研究は当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
Au25クラスターのポリマーへの分子吸着の結果を元に、吸着された分子とポリマー骨格をなすクラスターとの間でのエネルギー移動について検討する。また、そのエネルギー移動に着目したAu25クラスターポリマーの固体触媒の応用について更に詮索する。ポリマー内部のクラスター間の距離は、用いるアルキルジチオールの種類によって調整可能なことが明らかになりつつあるので、これを応用し、分子サイズ選択的な吸着についても検討する。 対アニオンにより誘起されるクラスターの自己集合と発光増大については、昨年度主に対象としたAu8クラスターに加え、Au13, Au6クラスターなど種々のカチオン性クラスターを用いて系統的に調査する予定である。また、配位子構造に依存した集合挙動の差異についても調べる。
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Research Products
(4 results)