2019 Fiscal Year Annual Research Report
原子論的アプローチによる鉄鋼材料の強化機構解析:MD法による粒界強度モデリング
Project/Area Number |
19J20306
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
兵頭 克敏 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 原子間ポテンシャル / 鉄炭化物 / 鉄窒化物 / 固溶炭素 / 固溶窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、分子動力学法という原子シミュレーションを用いて、極低炭素鋼及び極低窒素鋼における炭素や窒素の固溶量増加に伴う結晶粒界の強度上昇のメカニズムを計算シミュレーションにより明らかにすることを目的としている。本年度では、過去に作成していた各原子間の相互作用を再現する原子間ポテンシャル(シミュレーション精度を決定する最も重要な関数)の改良を行った。過去の鉄-炭素間相互作用に使用する原子間ポテンシャルはセメンタイト(Fe3C)という鉄炭化物の物性値である格子定数、凝集エネルギー、体積弾性率を再現できるものであったが、改良した原子間ポテンシャルはセメンタイトを加えた14種類の鉄炭化物の物性値に加えて鉄中における炭素の拡散障壁エネルギーについても高い再現性を示した。また、鉄-窒素間相互作用に使用する原子間ポテンシャルについても、過去に開発したものはγ'(Fe4N)という鉄窒化物の物性値を再現できるのみであったが、改良した原子間ポテンシャルはγ'を加えた7種類の鉄窒化物の物性値や鉄中における窒素の拡散障壁エネルギーを再現することが確認できた。上記のように、多くの炭化物や窒化物だけでなく固溶炭素や固溶窒素についても高い再現性を示す汎用性の高い原子間ポテンシャルを作成した事で、今後行う予定である鉄の結晶粒界近傍での炭素や窒素のエネルギー的安定位置の特定や粒界強度に対する炭素や窒素の影響についても、より信頼性の高いシミュレーションを行うことができると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度内にFe-C二元系及びFe-N二元系原子間ポテンシャルの改良が完了したため、次年度に予定していた様々な対称傾角粒界での固溶炭素や固溶窒素の偏析サイト(粒界近傍での炭素や窒素のエネルギー的安定位置)の特定のためのモンテカルロシミュレーションが可能となるため。
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Strategy for Future Research Activity |
<純鉄の粒界強度> 様々な対称傾角粒界に対して転位のパイルアップシミュレーションを行い、各粒界の粒界強度を測定する。 <炭素と窒素の偏析サイト> 上記で作成した対称傾角粒界を含む系に対して炭素もしくは窒素をランダムに固溶させ、モンテカルロシミュレーションにより炭素や窒素の粒界近傍での安定位置を調査する。 上記の偏析サイトの特定が完了した場合、炭素や窒素の偏析した対称傾角粒界に対する転位のパイルアップシミュレーションを行い、粒界強度を算出する。さらには各対称傾角粒界において純鉄での粒界強度と炭素や窒素の偏析後の粒界強度を比較する。
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