2019 Fiscal Year Annual Research Report
大型液体シンチレータ検出器によるニュートリノのマヨラナ性の検証
Project/Area Number |
19J20340
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
亀井 雄斗 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 低放射能技術 / 素粒子実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙・素粒子の未解決問題を解き明かす鍵としてニュートリノの関わる希少事象が注目され、神岡地下で進行する低放射能環境を活用した実験的研究の重要性が高まっている。実験には液体シンチレータ(LS)という有機溶媒が使用される。これを純化し、極低放射能環境を実現する新手法として有機合成分野において近年開発が進んでいるメタルスカベンジャー(金属捕捉剤)による吸着法が挙げられる。 本研究ではシリカゲルにアミノプロピル基が付加されたメタルスカベンジャーを用いて、小規模な装置で得られた純化技術を実際の実験規模に拡張し、放射性重金属吸着効率の向上を目指した。拡張した純化装置では直径10 cmの直管型吸着カラムを使用し、これまでに130 L/h程度の十分な純化速度が得られた。さらに温度調整により実際の実験環境を再現した上で主要バックグラウンド源である放射性鉛の除去効率を評価した。 目標純化効率は90%であるが、4回の純化ではこれに達しなかったことから吸着カラムの吸着層の厚みを2 cmから4 cmにし、メタルスカベンジャーの量を増やすことで3回の純化により、90.2±1.0%を得られた。 また、LSの性質を変えないことも純化における重要な点であり、感度波長において9 cm光透過率は0.24%以内で安定しており、LSに発光剤として溶かし込む化学物質は吸着されてしまうがメタルスカベンジャー1 gあたり0.17 LのLSをあらかじめ流しておけば、吸着が飽和してその後誤差1.0%以内で安定することが確かめられた。キセノンガスを溶かし込んだLSを用いる場合であっても、キセノンガスの吸着は十分に小さいことが確かめられた。以上より、この吸着法は、ニュートリノの関わる希少事象探索を遂行する上で有効であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
吸着カラムの吸着層の厚みを2 cmから4 cmに拡張することで容易に純化効率が向上することが確認できた。メタルスカベンジャーの量を増やすことが有効で、直列に複数個のカラムを用いればさらに高い純化効率が得られると考えられる。純化効率が目標に達成したことから、LSの性質の安定性などの補足的な事項について研究を進められたため、当初の計画以上に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた成果をまとめ、論文を投稿する準備に入る。並行して現在実験遂行中であるKamLAND-Zen800実験のデータ解析を行う。現状、KamLAND-Zen800ではメタルスカベンジャーによるLSの純化の必要性がないほどのバックグラウンドレベルであったため、早急な実用化は行わない。 データ解析ではやはりバックグラウンドの低減が必要で、重要なバックグラウンドの1つである宇宙線ミューオンが生成する原子核破砕物の崩壊イベントを除去に向けて研究を行う。 さらにキセノンの二重ベータ崩壊についてデータをアップデートしていき、現在設けている半減期への制限を更新する。
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