2019 Fiscal Year Annual Research Report
electro driven whispering gallery mode optical resonator from self-assembled conjugated polymer microspheres
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19J20398
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大木 理 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 自己組織化 / Whispering Gallery Mode / 光共振器 / 有機ELレーザー / 電気化学発光セル / キラル高分子 / 円偏光発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,普遍的な有機ELの原理に基づき,発光導電性ポリマーで作製したマイクロ球体からの電界発光(EL)を検討した.深いHOMOならびにLUMO準位と両電荷の輸送特性を併せもつF8BTからなるマイクロ球体を作製した.得られたマイクロ球体1粒子は光励起により優れたWhispering Gallery Mode (WGM)光共振器特性を示した.次に,AuとTiで作製したヘテロメタルナノギャップ電極上に作製したマイクロ球体を設置し,真空中で電界を印加したが,電荷の注入ならびに電界発光の挙動は確認されなかった.ナノギャップ電極を利用するデバイス設計ではキャリア輸送層を伴わないため,電極からポリマーマイクロ球体への電荷注入が困難であったと考えられる.次に,電荷注入の課題を克服するため,電気化学発光セル(LEC)の原理に着目した.電解質(イオン液体)とF8BTの混合薄膜をAuで挟んだ簡易な積層デバイスを作製し電界を印加したところ,混合薄膜からの電界発光を確認した.次年度は,電解質を内包したπ共役ポリマーマイクロ球体を作製し,電気化学的キャリアドープを利用する新たな指針で電界励起WGM発光の達成を試みる. また,新規共役ポリマーマイクロ球体の開発を行った.キラルな側鎖を導入したF8BTの自己組織化によるマイクロ球体の作製を検討した結果,コレステリック液晶に類似した長周期的らせん分子配向構造をもつ秩序高いキラルマイクロ球体の作製に成功した.F8BT主鎖の長周期的な集積構造により,アモルファス凝集であったこれまでのF8BT球体に対し,より優れた導電性が期待できる.また,マイクロ球体1粒子を集光した無偏光レーザーで励起し,1/4波長板と直線偏向板を挿入した顕微分光装置で円偏光スペクトル測定を行った結果,球体1粒子から巨大な非対称強度(glum値)を伴う円偏光発光(CPL)を観測した.現在,本研究成果をまとめた第一著書論文を投稿準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究テーマは電界発光に適した共役ポリマーマイクロ球体の開発と電荷注入の評価にあった.従来の戦略では,ナノギャップ電極間に生じる高電界を利用した電荷注入の促進を狙っていたが,それのみでは電極からポリマーマイクロ球体への電荷注入は困難であることが本年度の検討により明らかになった.ナノギャップ電極ではキャリア輸送層を挿入する自由度がないため,電荷注入障壁を克服する更なる戦略として電解質の導入に移行した.その結果,Auで挟んだ簡易な薄膜デバイスからの電界発光が確認されており,課題克服のための新たな指針を獲得できたといえる. 加えて,キラルな側鎖をF8BTに導入することで,マイクロ球体内部で主鎖が長周期的ならせん配向構造を形成することを見出した.一般に,異方的な分子集積構造と球体という等方的な自己組織化構造は両立せず,1次元異方的な性質をもつらせん集積体はファイバー構造に至る.本研究で得られたキラルマイクロ球体は,等方的な球体内部に異方的ならせん集積が両立した極めて高次な集積構造を構築したといえる.また,コレステリック構造に類似したその長周期的らせん分子配向により,マイクロ球体1粒子が巨大なCPLを発現していることを見出した.観測されたCPLの非対称強度は極めて大きく,近年急速な発展を見せている超分子CPL材料開発の分野にも大きなインパクトを与える研究成果が報告できると予想している.以上の理由を踏まえ,初年度の研究進捗としてはおおむね順調に進んでいると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は,ナノギャップ電極のみでは共役ポリマーマイクロ球体への電荷注入障壁を克服する高電界の獲得が困難である事実に直面したが,課題克服の戦略として電解質の導入による電気化学的キャリア注入の利用への手掛かりを掴んだ.2年目は,F8BTに適量のイオン液体分子が分散したマイクロ球体ならびにF8BTにPEO(イオン導電性ポリマー)と固体電解質(lithium triflate)を混合した2種類のマイクロ球体の作製を試みる.作製したマイクロ球体へ電圧を印加することにより、電極界面で内部電解質による電気二重層が形成され、より高効率な電荷注入を実現させる.また,電解質を内部に導入しなくとも,電極近傍に滴下するのみで電気化学的キャリアドープの効果が得られることも報告されている.そこで,初年度作製した秩序高いキラルF8BTマイクロ球体に対し,イオン液体の滴下による電荷注入を試みる.電荷の注入が達成された際には,内部の配向性に由来する高いキャリア輸送と再結合が期待できる.また,微小電界円偏光発光素子としてのデバイス応用も大いに見込める. 現在,キラルF8BTマイクロ球体に関しては,球体1粒子からの角度依存CPL特性を調査中であり,内部分子配向構造とCPL特性を結びつける詳細な知見の獲得を目指している.本研究はその特異な分子集積構造と発光特性に焦点をあてた成果をまとめ,いち早い世界への論文発表を目指す.また,並行する形で,面不斉π共役分子の自己組織化に関しても興味深い現象を見出しており,そちらに関しても研究を進める予定である.
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Research Products
(10 results)