2019 Fiscal Year Annual Research Report
Thomas Aquinas' Theory on membership and actions in Church
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19J20400
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
波多野 瞭 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | トマス・アクィナス / 秘跡 / 権能 / 教会 / 聖職者 / キリスト教 / 中世哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
主に、司祭以下の聖職者共同体の区分の原理を説明する要素として「権能(potestas)」が占める位置に関して研究を進めた。具体的には、以下の歴史的経過が明らかになっている。 13世紀初頭から見ても、職務が位階の区別に対応するという観点があった。しかし、司祭と、品級(ordo)に属さない司教以上の地位を区別するために用いられた概念もまた「職務」であり、同時に司教を司祭以下から明確に区別する方針もまた、ロンバルドゥスにおいて既に提示されている。言い換えれば、特に司祭以下の位階の区別を「職務」に対応させる場合、司祭と司教の間に置かれる決定的な断絶を説明できないという問題があった。レトロスペクティヴに見るなら、当然、聖体の執行への秩序という観点から司祭以下の位階の区別をとらえ、司教に関して別の原理を設定することでこの困難は克服される。しかしこの方策が明確に取られるまでには13世紀初頭の論争を経由せねばならなかった。この帰結としてのヘールズのアレクサンデルの見解が依然不徹底であったこと、これが13世紀半ばのアルベルトゥス・マグヌス、ボナヴェントゥラ、トマス・アクィナスらに引き継がれて徹底される。 こうした研究課題に直接かかわる部分についてはフランス語で準備されており、規模の大きな論文の一部とされる予定である。周辺的な領域(復活論、感情論、人間の霊魂のはたらき)について進めてきた成果は、査読論文1報、口頭発表1報というかたちでまとめられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度(令和元年度)中、指導委託制度を利用し、ストラスブール大学(フランス)で研究を遂行した。パリ高等研究実習院やヴェネツィア大学の研究者とも連絡をとりつつ、 日本国内で入手困難な文献を現地で収集し、概ね期待通りに研究を進展させている。特に先行研究の希薄な、網羅的に情報を収集し整理しなくてはらない範囲について、的確に限定を施しつつ作業を遂行している。さらに、複数の国際会議に出席し、人的交流も積極的に行なっていると言える。具体的には、本年度分の研究のうち、研究課題に直接かかわる部分についてはフランス語で準備され、規模の大きな論文の一部とされる予定である。周辺的な領域について進めてきた成果に関しても、査読論文1報、口頭発表1報というかたちでまとめられており、作業は期待通り進んでいるものと評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
霊印については一定程度研究内容を拡張し、ex officioの概念及び「無償で与えられた恩寵」に関する理論をも検討することで、霊印論に関する記述の徹底を図る。 文献の収集についても、成果の公表についても、目下の状況に鑑み、一般に困難が増えることが予期される。 文献については、2019年度中に相当量の文献を収集しており、大きな問題は生じにくいと考えられるが、新たな二次文献の収集には相当の困難が生じることが予想されるため、一次文献の読解にいっそうの時間を割く。 成果の公表は急がず、規模の大きな成果として纏める方針をとる。具体的には、学会発表や学会での人的交流に関しては抑制策をとる。
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