2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of neutron veto system for high-sensitivity direct dark matter search
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19J20418
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
水越 彗太 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ダークマター / 低バックグラウンド / 中性子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダークマターの性質解明は宇宙物理学, 素粒子物理学の重要な未解決問題である. 宇宙の観測などの間接的証拠により, ダークマターの存在は強力に示唆されているが, 未だ直接検出には至っていない. キセノン気液2相式の実験は, ダークマターと標的核の原子核反跳と, 背景事象由来だと考えられる電子反跳を区別することが可能で, 近年大きな成果を上げている. ダークマターの直接探索実験において, 現状の感度は主に背景事象によって制限されている. とりわけ, 中性子は検出器素材内からも放出され, 標的核と原子核反跳を起こすためダークマターの信号と原理的に区別ができず, 非常に避けづらい背景事象の一つである. 本研究では, XENONnT実験の周囲に中性子反同時計測システムを構築することによって, 中性子由来の事象をタグし, ダークマター候補事象から除くことを目的とする. 反同時計測システムは水チェレンコフ検出器をもちいて, 中性子を水や溶融したガドリニウムによって吸収させ, γ線を放出させる. 120本の光電子増倍管によってこのγ線由来のチェレンコフ光をタグする. 本年度はこの中性子反同時計測検出器 (nVeto)を含めてXENONnT検出器が建設され, 現在調整中である. また, 検出器の較正, 安定性評価に重要な光源を作製し, 自動で調整, 監視が行われるシステムを構築した. また, シミュレーターや解析ツールについても完成版をリリースすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は世界的なコロナ禍により, イタリアのグランサッソ研究所現地での作業を行うことができなかった. 試験, 調整を行ったハードウェアを自力でインストールできなかっった事は残念であるが, 国際共同協力によって検出器が建設され, 現在調整中である. 建設, 調整中では, 現地での検出器構築作業と, リモートでの素早いデータ解析の協力により, 効率のよい構築が実現できたと自負している. また, リモートワークを進めた結果, シミュレーション, 解析ツールなどのソフトウェア分野での研究を進めることができた. 検出器の応答をふくめた波形シミュレーターや, 解析に用いるツールを完成させることができた. これらはこれからの解析の大きな礎となっていく. 今後は, 実際のデータに照らして微調整を行っていくとともに, 系統誤差を定量的に評価することで, データをまとめ, 研究を発表する段階に向けて順調に進められていると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も, 現地での検出器構築作業や, 光キャリブレーションデバイスの導入を行う事は難しいと考えられる. 昨年度構築された協力関係を活かして, 中性子反同時計測システムが全体で動作するようにリモートを基本として調整, チェックを注意深く進めていく. 事象を再構成する解析ツールは既に準備済みであり, 有効にツールを用いて実施する. 光キャリブレーションについての解析をすすめ, 検出器応答への理解を深める. 定量的にシミュレーションツールにもフィードバックをかけ, より小さな系統誤差で実験を再現するシミュレータを構築する. これらの検出器が安定して, 自動で動作するシステムを構築する. 今後, 中性子バックグラウンド事象を抑えながら, 測定時間を伸ばしていく事で世界最高感度でダークマターの探索を行い, 世界初のダークマターの発見をめざす. ダークマターが発見されない場合には, ダークマターの核子との断面積の上限値を定量的に評価する.
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