2020 Fiscal Year Annual Research Report
大型キセノン検出器を用いた暗黒物質の世界最高感度探索
Project/Area Number |
19J20429
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 伸行 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | 暗黒物質 / 液体キセノン / 純化 |
Outline of Annual Research Achievements |
暗黒物質は宇宙の観測から存在が確実視されており、我々の体を作るような通常の物質の5倍も存在しているとされているが、その正体は不明である。この研究はイタリアのグランサッソ国立研究所で準備が進められている世界最高感度実験XENONnT実験のパフォーマンスを最大化するためのものである。 XENONnT実験では今までにないほど大量のキセノン を使うことになるが、そこではキセノン中に含まれる酸素などの不純物が信号を弱めてしまい感度低下につながる。既存の純化手法の限界が既に過去の実験からも見え始めていたため、より高速で処理できることが期待される液体のまま循環・純化を行うシステムの開発を行った。なお、既存の方法では液体を全て一旦気化してから純化していたためスピードアップがしにくかった。 今まではフィルター候補に液体キセノンを流し、液体キセノンの純度変化を純度モニターで測定することでフィルター候補の純化能力の評価を行なってきた。それらのデータをもとにたてられた純化戦略を使い、2020年度の秋からTPCなど実験装置全体が組み上がった状態で本番の純化を開始させた。その結果、液体キセノンの純度は急激に上昇し、十分満足のいく純度をキープさせることに成功した。また、当初の懸念事項であった、ノイズの元となる放射性物質のラドンの放出も、無視できる程度に抑えることに成功した。この成果により、XENONnT実験のパフォーマンスを最大化することが可能になったと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フルスケールのキセノン量で純化を開始することができ、要求レベルを上回る高い純度を達成することができた。また、懸念していたラドン放出に関しても無視できるレベルであった。キセノン純化という観点からは満足いく結果を得られたと考えている。また、実験装置のコミッショニングとそのデータ解析も行なっており、XENONnTの最初の結果に向けて着実に進んでいる。暗黒物質以外にも2020年度XENON1T実験から公表された未知の電子反跳事象のXENONnT実験での検証も急務である。
|
Strategy for Future Research Activity |
液体キセノン純化に関しては、良い成果が得られたと考えているため、今後は論文を用意する予定である。また、この純化システムは引き続き実験にとって重要な装置であるため、安定して運用できるように努める。 また、2021年度は物理解析のための最初のデータが得られる予定である。世界各国の共同研究者と協力してそのデータを解析し、最新結果に貢献したい。
|
Research Products
(5 results)